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八日目の蝉 角田光代 中公文庫

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『八日目の蝉』は何年か前に流行してドラマ化、映画化された作品。なんとなく地雷臭がして今まで読んでいなかったのだけど、ふと気になることがあって読んでみた。やっぱり私には地雷だった。

不倫の末、妊娠・堕胎して男に捨てられた女が、男の娘を誘拐して育てる話。

そう言えば「優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした」というキャッチコピーを覚えている。

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八日目の蝉

逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか…。

東京から名古屋へ、女たちにかくまわれながら、小豆島へ。偽りの母子の先が見えない逃亡生活、そしてその後のふたりに光はきざすのか。

心ゆさぶるラストまで息もつがせぬ傑作長編。

アマゾンより引用

感想

確か当時は誘拐犯の主人公に同情が集まったように記憶しているが、私には全く同情できなかった。

これは私が結婚して母親になったからではなくて、未婚の時に読んでいたとしても同じ感想を抱いたと思う。

女が子どもを育てることによって、母性が沸き上がってきたり、子どもの存在に癒やされたりするのは理解出来る。だが、子育てって楽なことばかりではない。

特に0歳から幼稚園入園までは、子育てが上手くいかなくて育児ノイローゼになる母親だっているくらいなのだ。この作品では、その辺りの事はまったく描かれていない。

誘拐した女の子は、神憑り的に育てやすい子(現実世界にもたまにいる)だった……という都合の良い設定のようだ。

普通、ありえん。夜泣きも、イヤイヤ期も全てスルー。こんな育児なら私も、もう1度経験してみたい。

そして何よりも腹立たしく思ったのは「誘拐犯にも母親の愛情が生まれていて、彼女も母親だった」という描かれ方。

誘拐犯は女の子の人生をメチャメチにしただけだと私は思う。

そして謎の新興宗教の描かれ方も都合が良すぎて、なんだかなぁ……って感じだった。村上春樹の『1Q84』もそうだけど、カルト系の新興宗教を都合よく使うのはいかがなものか。

まぁ、素材として使いやすいだろう事は理解できるのだけど安易過ぎると思う。

あえて良かった探しをするならば「小豆島って素敵なところだな」ってのが伝わる文章だったって事だろうか。

残念ながら私の感性には合わない作品だった。

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