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檸檬 梶井基次郎 新潮文庫

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なにげに、やるせない気分になった時に、読みたくなる作品である。

初めて読んだのは国語の授業の課題だったと思う。

檸檬爆弾だなんて馬鹿げたことを、真顔で語る大人がいるということに言い知れぬ感動を覚えた記憶がある。

「もしも○○が、○○だったら、○○は、こうなるだろう」というような妄想ごっこ的な遊びは、誰しも経験があると思うのだがそんな妄想を、こうも鮮やかに表現されてしまったら「参りました」と言うより他にない。

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檸檬

私は体調の悪いときに美しいものを見る贅沢をしたくなる。

しかし最近は馴染みの丸善に行くのも気が重い。ある日檸檬を買った私は、その香りや色に刺激され、丸善の棚に檸檬一つを置いてくる。

現実に傷つき病魔と闘いながら、繊細な感受性を表した表題作ほか、「城のある町にて」「雪後」などを収録。

アマゾンより引用

感想

ほんの短い短編小説なのに、うるさいほど「色」が登場する。

向日葵だの、花火だの、檸檬だの……真っ白なキャンバスに絵の具をぶちまけたような配色のバランスなど、まったく考慮に入れていないアンバランスさはどこか抽象画を思わせるような、危うい魅力に満ちている。

読んでいると、不安な気持ちを引き起こされてしまうのに、ふと手に取ってしまいたくなるからタチが悪い。

梶井基次郎の作品は、それほど数を読んでいないのに、それでも私の中では、印象深い作家の1人である。

この本に収録されている『桜の木の下には』がこの世に出てこなければ桜の木の下に死体が埋まっている……というフレーズが、ここまで日本人の間に根付いていなかったのではないかと思う。

梶井基次郎は、わずか31歳という若さで夭折しているが『檸檬』を読むにつけ、天才と夭折は切っても切れない関係なのか?……などと思わずにはいられない。

梶井基次郎が長生きしていたら、どんな作品を書いたのだろう?と思う反面、夭折した作家だからこそ、かえって作品の印象が深くなるのかと思ったりする。

滅多に再読することはないが、それでも捨てることのできない特別な1冊である。

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