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消えない月 畑野智美 新潮社

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畑野智美は初挑戦の作家さん。

ジャンルはミステリ。ミステリは苦手なのだけど、この作品は殺人とか推理ではなく、ストーカーがテーマなので本格的なミステリが苦手な人でも楽しめると思う。

被害者の視点と加害者の視点、両サイドからストーカーを浮き上がらせる手法で「なんだかんだ言ってこの世の中で1番怖いのは人間」と言うところに行きつく怖さのある作品だった。

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消えない月

どうすれば、気持ちが伝わるのだろう? 出会ったことは、運命だったのか? この感情は、恋なのか、ストーカーなのか――。なぜ、さくらは、僕から離れようとするのだろう。どうして、松原さんは、別れてくれないの。婚約までした二人の関係は、はじめから狂っていたのかもしれない――。緊張感に満ちた文体で、加害者と被害者、ふたつの視点から「ストーカー」を描いた価値観を揺さぶる衝撃作。

アマゾンより引用

感想

ストーカー被害に合うヒロインはマッサージ師。真面目で恋愛下手。私はのっけから掴まれてしまった。

仕事と家との往復と職場の人達との恋愛感情のない付き合いに終始しているヒロインはかつての自分と重なって「あ~。もう、なんなのよ~」みたいな気持ちにさせられてしまった。

ちょっとした描写がやけにリアルで「そうそう。こういうタイプの女性っているよねぇ」な感じ。ヒロインに共感する女性は多いんじゃないかと思う。

そんなヒロインが客として治療院を訪れていた男性と付き合うことになり、恋人がストーカー化するところから物語はいっきに進んでいく。

ミステリなので、細かい事をあれこれ書いてしまうと面白さが半減するので自粛するけれど、ストーカーの怖さがたまらなく良い。

そしてヒロインの駄目っぷりには心底イライラさせられた。この「イライラさせられた」と言うのは褒め言葉として受け取って欲しい。

ヒロインのようなタイプの女性を私は何人も知っている。真面目だし、いい人だし、優しい人ではあるけれど、人の意見に流されやすくて優柔不断。

読者は読んでいて「ちょ…それは駄目だって」と思うところが沢山出てくるのだけど、ヒロインは駄目な方へ駄目な方へと突き進んでいく。

そしてストーカーの恋人。これもまた「あ。こう言う人、いるよね…」なのだ。

私は幸いにも直接このタイプの人と関わった事はないけれど、共依存と言うのかな…ヒロインのようなタイプの女性は不思議とこのタイプの男性に引っかかりやすい。

キャラクター設定といい、物語の運び方といい「上手いなぁ」と感心してしまった。

ラストはちょっと急ぎ過ぎたかな…とは思うものの、最後まで勢い良く読ませてくれた。

脇役がいい人揃い過ぎだったり、ヒロインの心情がところどころ雑に扱われていたりと、粗っぽいところはあるものの、ストーカーをテーマにした小説としては成功しているのではないかと思う。

続きが気になるタイプの作品でいっき読みしてしまった。

はじめて読む作家さんだったけれど、他の作品も読んでみたい。

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白い木蓮の花の下で
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