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ガラスの殺意 秋吉理香子 双葉社

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私は基本的にミステリー小説は苦手なのだけど、秋吉理香子の書くミステリー小説は不思議と楽しめてしまう。

『ガラスの殺意』は病院の待ち時間に読んだけど、面白過ぎてイッキ読みしてしまった。

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ガラスの殺意

ザックリとしたあらすじはこんな感じ。

閑静な住宅街に建つ一軒家で今二十年前に起きた通り魔事件の犯人が刺殺された。犯人は少女時代に通り魔事件で愛する両親を失ったヒロイン。

ヒロインは通り魔の現場から逃げる時に交通事故に遭遇したことにより、高次脳機能障害になっていた。

ヒロインは警察に逮捕されるのだけど、犯人を殺した事自体の記憶が無い…

ここで問題になるのが「高次脳機能障害」と言う病気。最近はテレビの特集などでも取り上げられる。

ヒロインの高次脳機能障害を前提に物語が進んでいく。

感想

高次脳機能障害とは?

高次脳機能障害とは、脳卒中や事故などをきっかけとして脳の機能が著しく障害を受けることにより、さまざまな状態を引き起こすことを指します。

たとえば、ものを覚える、気持ちを抑える、目的を持ってものごとを遂行する、などがうまく行えなくなってしまう状態です。

上記のような状態となることから、高次脳機能障害を発症すると、日常生活を送ることが難しくなる場合もあります。

メディカルノート より引用

高次脳機能障害になると記憶が曖昧になったり、そもそも新しいことを記憶出来なかったりするらしく、症状はなんとなく認知症と重なる部分がある。

実際、この作品の中に登場する刑事の1人は認知症を患っている自分の母親とヒロインを重ねて見てしまう(その発想が捜査に役立ったりもする)場面が登場する。

「本当にヒロインが被害者を殺したのか?」「もしかしたら誰かにハメられたのか?」「誰かにハメられたとしたら真犯人は誰なのか?」と言うところを追っていく。

冒頭部分はトンチンカンな受け答えをするヒロインを描写しつつ「高次脳機能障害ってこんな病気なんだぜ」的な説明。

その後、ヒロインの過去と現在。そして物語の真相へと迫っていくのだけど、物語が中盤を過ぎたあたりから、一気に面白くなってくる。

ミステリー小説なのでネタバレ無しで感想を書くのが難しいのだけど、話が二転三転するあたりが最高に面白い。勘の良い人なら「やっぱりなぁ~」な展開かも知れないけれど、ドラマ性が高いので、展開もオチも納得出来た。

それにしても脳の障害って残酷だ。

私も父が50代で肝炎から脳の障害で認知症のような状態になった経験があるため、ヒロインの高次脳機能障害にしても、刑事の母親の認知症にしても他人事とは思えず、必要以上に肩入れして読んでしまった。

ハッピーエンドとは言えないラストだったけど、胸クソ悪い系ではない。切ないけれど読んで良かったと思えるラストだった。秋吉理香子の次の作品も期待したい。

 

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