『おばちゃんたちのいるとろ』は幽霊・化け物がテーマの連作短編集。それぞれ落語や歌舞伎、民話等に出てるく幽霊などをモチーフにして描かれている。
ちなみに題名はもモーリス・センダックの『かいじゅうたちのいるところ』と言う有名な絵本が下敷きになっていて、作品中にもチラリと出て来る。
そこそこ面白かったのだけど、残念ながら「そこそこ」の粋を出ない感じ。
面白いと言えば面白いのだけど、元ネタのパロディ作品と言うことで軽いと言うか、明るいと言うか。要するに読みごたえがなのだ。
おばちゃんたちのいるとろ
わたしたち、もののけになりましょう!
あるときは訪問販売レディ、あるときはお寺の御朱印書きのアルバイト、そしてあるときは謎の線香工場で働く〝わたし〟たち。 さて、その正体は――?!
アマゾンより引用
感想
星新一のショートショートにも雰囲気が似ている気がするのだけど、星新一のショートショートほど切れが無いのが残念。どれもこれも良い話ではあるのだけれど、毒がなくてパンチが弱い。
そんな中でも気に入ったのが八百屋お七ゆかりの寺にやってくる女性達と御朱印帳の字を書いている女性を描いた『燃えているのは心』と言う作品。
日本の女の人たちは、はまる力が強いような気がする。はまったものには一途だし、できることは全部やろうとする。そのためには、がんがんお金を使うし、どんどん詳しく調べて、行動することをいとわない。すごく情熱的だ。
この一文には「そうそう! そうですよね。私もそう思います」と全力で同意してしまった。
まったくもって私自身もそのタイプ。今は残念ながらそこまでハマる物を持っていいな状態だけど、ハマっている物がある時のパワーは計り知れないものがある。
松田青子の作品を読むのは初めてなのだけど、人間観察が上手な人なのだと思う。
こんな小細工が先走った作品よりも、会社で働くOLとかママ友界隈等の泥臭いところを書かせたら上手いんじゃないかな…って気がした。
面白くない訳じゃないんだけど、圧倒的にパンチが足りない。連作短編集だから仕方がない部分もあるけれど、どの作品もアッサリしていてガツンと響くものがない。
……とは言うものの「上手いなぁ」と思う部分もあったので、気が向いたら他の作品も読んでみようと思う。