またしても題名借り。前評判等を知らず、題名から恋愛小説だろうと想像して借りたのだけど全然違っていた。
恋愛小説どころか「死」がテーマになっている短編集。しかも軽くホラー。
ガッツリしたホラー小説ではないのでホラー小説好きでなくても読めるとは思うけれど、題名だけ見て借りるとビックリすると思うし、私はとてもビックリした。
朝が来るまでそばにいる
弱ったとき、逃げたいとき、見たくないものが見えてくる。高校の廊下にうずくまる、かつての少女だったものの影。
疲れた女の部屋でせっせと料理を作る黒い鳥。母が亡くなってから毎夜現れる白い手……。何気ない暮らしの中に不意に現れる、この世の外から来たものたち。
傷ついた人間を甘く優しくゆさぶり、心の闇を広げていく――新鋭が描く、幻想から再生へと続く連作短編集。
アマゾンより引用
感想
私の好きな路線とは少し違うのだけど、軽く変態ちっくな雰囲気でハマる人はハマると思う。
感覚的な気持ち悪さが上手く表現されていた。
ホラーと言っても擬音と手触りがメインで気持ち悪さを表現していて、とても女性的な感じがした。自分自身を含めて女性の方が男性よりも「触感」を重視している気がする。
「ふわふわ」とか「つるつるつ」とか、やたら肌触りを気にすると言うか。もっとも、この作品に出てくる触感はあくまでも不愉快方面で発揮されているのだけれど。
嫌いではないけれど、グイグイと食い込んでくる感じがなくて物足りなかった。
数ある作品の中で好みだったのは『かいぶつの名前』くらい。
この作品はホラーらしいホラーって感じで、古き良き少女漫画ホラーを思わせるような感じだった。80年代の少女漫画って、やたらホラーが流行っていて、漫画絵を付けたらしっくりくるように思った。
それぞれの主人公は大人もいれば子どももいたけれど、彩瀬まるは大人の女性よりも少女を描く方が得意なのかな…と言う印象を受けた。
主人公が大人の女性の作品よりも、高校生だったり若い女性だったりする作品の方が断然面白い。
初挑戦の作家さんなのだけど、柚木麻子系とでも言えば良いのか「女性限定」「少女限定」の作家さんと言う印象を受けた。大人の読み物としては少し物足りない。
もうちょっと若い頃に読みたかったな…と思う作品だった。