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のろい男 俳優・亀岡拓次 戌井昭人 文藝春秋

戌井昭人の作品を読むのはこれで3冊目。

私は戌井昭人の書く「男」が好きみたいだ。飄々してとぼけた感じがとても良い。

今回の主人公は映画俳優。映画俳優と言っても脇役。売れない…ってほどではないけれど、決してスターではない。

時代劇の斬られ役の名人として、福本清三が注目を集めた事があったけれど、イメージとしてはそんな感じ。

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のろい男 俳優・亀岡拓次

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亀岡拓次、40歳。下着泥棒から火宅の作家まで、哀愁漂う男を演れば天下一。

傑作シリーズ第二弾の本書では、大女優・松村夏子さんの胸を揉んだり、さっぽろテレビ塔で狙撃されたり、伊東で地元のおっちゃんたちと踊ったり、イカれたTVプロデューサーと保育園のニワトリを追いかけたり。

ついに、ポルトガルの海辺の町で、郷愁の酔っぱらいになって……。

アマゾンより引用

感想

連作短編形式で感動的な物語ってほどでもなく、これと言って華々しい事件が起こる訳でもなく、物語は淡々と進んでいく。

実在の映画や監督、俳優をモデルにしたものが多いので、日本映画が好きな人はそれだけでも楽しめるのではないかと思う。

主人公の亀岡は天才ってほどではないけれど玄人筋から評価されるような俳優で真面目過ぎずふざけ過ぎず。

映画を愛していて俳優と言う仕事は好きらしい。独り身で呼ばれたら全国どこにでも(世界にも)出向いて行く。

役に対して真面目に取り組む反面「どこにでもいる中年男」の一面もあり、どこか抜けているところもあったりするところがとても良い。

「リア充」って感じではないものの、彼なりに人生を楽しんでいるのが伝わってくるので、読んでいてとても気持ちが良い。

いくつかある短編の中で私が1番気に入ったのが『かぼすと乳房』。

ロケ先の大分で、とんでもない成り行きから老婆の乳を揉まざるを得ない状況に陥った時、若かった頃に共演した大女優の事を思い出す………と言う物語。

主人公の良さもさることながら、主人公に「舞台俳優じゃなくて、映画の方が向いている」と助言してくれた大女優と大分の老婆がそれぞれ魅力的に描かれていて「人生って面白いな」と思えるような作品だった。

芥川賞の候補になった『すっぽん心中』を読んだ時も感じたのだけど、戌井昭人の作品は肩の力が抜けている感じがとても良いのだ。

読んでいて疲れない。それでいて面白い。

手に汗握ったり、感動の涙を流すような作品ではないけれど、気楽に読めて気持よく楽しませてくれるのだ。出先で読んだのだけど良い気分にさせてもらった。

戌井昭人の作品は新刊が出たらまた読みたいと思う。

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白い木蓮の花の下で
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