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あの日、マーラーが 藤谷治 朝日新聞出版

娘が夏休み中は図書館へ行っても本をじっくり選ぶ余裕が無くて、またしてもオススメコーナーにあった物を表紙借り。

前知識ゼロの状態で「マーラーとか言ってるし、コンサートホールの写真が表紙だからクラッシック音楽がらみの話だろう」と思って手に取った。

まぁ、実際そこは当たっていたのだけれど、今回も前回読んだ本に引き続いての「3.11」をテーマにした作品だった。

今にして思うに、あのオススメコーナーは防災週間がテーマで震災文学を集めていたのだろう。

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あの日、マーラーが

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朝日新聞出版
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2011年3月11日。東京・錦糸町の錦糸ホールで新世界交響楽団のコンサートが開かれようとしていた。演目はマーラーの交響曲第五番。しかし、14時46分、東日本大震災が発生する。そんな中、3カ月前に離婚したばかりの八木雪乃、音楽評論家の永瀬光顕、アイドルおたくで今は楽団のヴァイオリニストのファンである堀毅、夫亡きあと、三田のワンルームマンションで暮らす川喜田すずらは会場に向かうが…。

アマゾンより引用

感想

この作品はあくまでも「フィクション」だけど、実際にあった出来事を参考にして書かれているとのこと。

東日本大震災のあった日、新日本フィルハーモニー交響楽団は、ダニエル・ハーディング氏を招いてマーラーを演奏していたのだとか。会場はすみだトリニティホール。

私は大阪にいたので東京の状況はテレビでしか知らないけれど、帰宅困難者がたくさんいて大変だったあの日に通常通りコンサートをしたのだとか。なかなかの驚きである。

物語の主人公は4人の観客。(と正確には演奏者)

それぞれに人生があり、音楽との関わり方も様々。4人の目を通して「3.11」を浮き彫りにしていくスタイル。

「日本中が大変な事になっている時にコンサートだなんて不謹慎な」と言う意見もあるだろうけれど、これが意外と面白かった。

クラッシック音楽のファンって、自分自身を含めて、ちょっと変な人が多いと思う。

そもそもチケットが高額過ぎるのだ。そんな高額なチケットをポンと出すなんて、よほどのお金持ちか好き者だから「変わり者率」とか「変人率」がかなり高い。

ヲタクの世界もディープだが、クラッシックの世界もなかなか凄い。4人は4人それぞれ、こじらせちゃった感じの人で、その設定は上手いなぁ…と思った。

1番面白かったのは最年長の「すずさん」と言うおばあちゃん。クラッシックを聞き始めたのは年をとってから。この人の人生が1番面白かった。

クラッシックファンには理屈っぽい人が多いのだけど、音楽って本当はすずさんのように素直に楽しむものだと思う。

すずさんは苦労人と言われるような人だけど、本人は周囲が思うほど苦労したとは思っていなくて、飄々と人生を楽しんでいるとこが素敵だと思った。

もっとも、これは小説の中の登場人物なので、実際はすずさんのように恵まれたお年寄りは少ないと思う。健康面と金銭面が不自由だと、あんな風には生きられないので、ある種のファンタジーとも言えなくはない。

地下アイドルヲタクから、バイオリニストの追っかけになった若者の話も面白かった。共感出来るようなタイプではなかったけれど、すずさんとコンビを組ませると「今どきの若者」って感じもありつつ「なんだか言ってイイヤツだな」な部分が際立っていた。

残り2人の当時人物はそれぞれ「いかにも」な感じのクラッシックファン。特に良いとも悪いとも思わなかった。

さて。ここで「非常時にコンサートを開くこと」そして「非常時にコンサートを聞きに行くこと」について。

賛否は色々あるだろうけれど、もし私が独身で家族の心配をしなくていい立場でチケットを持っていたら、とりあえず行っていたと思う。

実際、4人の主人公達はそれぞれ身軽な身分だった。「子どもがいる母親」とか「老親と同居している人」だったら、この物語は成り立っていない。

なんだかんだ言って「生演奏を聞く」と言うのは贅沢な趣味なのだと思わざるを得ない。

最近、続々と出版されている「震災文学」の中では軽めの部類だと思うし、東京が舞台なのでインパクトは弱いけれど、これはこれで面白かった。

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白い木蓮の花の下で
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