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寝ずの番 中島らも 講談社文庫

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この夏は何故だか私の中だけで中島らも祭りが開催されている。理由はよく分からない。

まぁ中島らもの作品は夏が似合うから仕方がない。『白いメリーさん』のようなホラーは夏に読むのが良いし、アル中・薬中系の話も夏が似合う。

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寝ずの番

ザックリとこんな内容
  • 希代の咄家・橋鶴が亡くなって、弟子たちが「寝ずの番」をすることになった。
  • 『寝ずの番がテーマの三部作の他にも、馬鹿馬鹿しい系の話を収録。
  • ちょっとエッチな中島らもらしい短編集。

感想

ある落語家が亡くなって、弟子たちが通夜の席で「寝ずの番」をする……と言う設定での物語。

落語と言うと全国的には東京の方が有名だと思うのだけど、個人的には上方落語も負けてはいないと思っている。

中島らもは落語家とも親しくしていて、一時期は彼の劇団に所属していた落語家がいるほどだ。この作品はたぶん、そんな中から生まれたのだと思う。

しかし改めて読むと、この作品の面白さとかネタが現代にも通用するかどうかは軽く疑問だ。

私がはじめて読んだのは随分前だし「面白い」と言う先入観があって読むので今読んでも面白いけれど、小劇団のネタっぽい話が今を生きる人達に通用するかどうかは分からない。

……とは言うものの、この作品は決して古臭くてツマラナイ作品……と言う訳ではないと思う。

私はこの作品の中で大阪弁、関西弁の使い方に注目して戴きたい。

大阪弁、関西弁と言うと吉本の芸人さんが使う「乱暴で汚い」と言う印象を持っている人が多いと思う。

実際、テレビで見聞きする大阪弁、関西弁は関西人が聞いても「それは無いわ…」と思うものが多い。

しかしそうかと言って谷崎潤一郎だの田辺聖子だのの関西弁となると「そんな上品な言葉を使う人は絶滅しましたね」と言う感じ。

『寝ずの番』の作品の中に登場する関西弁は軽くやり過ぎ感があるものの「関西人が本当に使う関西弁」に近い。

関西弁を駆使して笑いを取る落語家が主人公なので落語独特の言い回しも多いけれど、登場人物達のやりとりは、大阪の街を歩いていたら小耳に挟む事が出来るレベルのものだ。

私は個人的にこの短篇集が好きなのだけど、下品……と言うかエロっちいネタも入ってるので「是非、読んでみてください」と声を大にしてオススメする事は出来ない。

「下品ネタがアリな方はどうぞ…」くらいにしか言えないと言うか。

久しぶりに再読してみたのだけれど、懐かしさ込みで面白かった。

バカバカしい話ばかりだし、読んだところで人生の糧にはなりそうにもないけれど、だがそこが良い。中島らもって小学校のクラスに1人いる「アホな男子」のエキスを抽出して煮詰めたような人だと思う。

また機会作って少しずつ中島らも作品を再読していきたいと思う。

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