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黄色い牙 志茂田景樹 講談社

志茂田景樹と言うと「奇抜な格好でテレビに出てくる作家さん」と言うイメージが先行していて、今まて1度たりとも読んでみたいと思わなかった。

最近は絵本の読み聞かせ活動をなさっているとのこと。

正直、こんな骨太な作品を書く人だとは思ってもおらず、良い意味で裏切られてしまった。第83回直木賞受賞作とのこと。

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黄色い牙

家族の絆、人間と動物の熱い交流。失われた価値を求めて今、圧倒的な注目を集める話題作がついに電子書籍で復刊!

秋田山中で狩猟によって生活しているマタギの社会を迫真力に富んだ筆致で描いている。

Googlebooksより引用

感想

マタギの里が舞台で主人公はマタギの統領(シカリ)。彼の幼少期から初老期までを描いた作品。熊撃ちや、人間と熊との戦いをテーマにした文学作品は意外と多い。

個人的には吉村昭の『羆嵐』が至高だと思っているけれど、この作品は『羆嵐』にも劣らない素晴らしさだった。

もっとも、『羆嵐』は「熊と人との戦い」がテーマになっていたけれど、この作品はマタギの生き方がメインになっていて方向性が違うので、較べるのは野暮ではあるのだけれど。

マタギの集落の生活が丁寧に描かれていて「マタギの風俗をを知る」と言う意味でも興味深い。

マタギの里の暮らしは厳しい掟があり、決して楽ではないけれど、飢饉や不況がきても飢える事はなく、ひと言で説明するなら「足るを知る」と言う感じ。

山と自然を恐れ、感謝し、共存していく姿が生き生きと描かれている。物語は大正からはじまって昭和初期で終わっている。世の中が便利になっていく中でマタギの生活も変わり、やがては滅びへと向かっていく。

ラスト近くで主人公が鉄砲を持つことで楽をし過ぎたマタギは獲物を摂り過ぎてしまったから、マタギが滅んでゆくのではないかと考え「自分の父親達が活躍した時代が最もマタギが楽だった時代」と感じる場面は、現代の日本に通じる部分もあるように思う。

今の日本は豊かだと言われているけれど、豊かさの中で逃げ切る事が出来るのは団塊の世代の人達まで。ワーキングプアーや若者の貧困が問題になる現代の若者の悩みと、主人公の悩みは同じだと言ってもいいような気がする。

主人公の生き方、マタギの里の風習も面白かったけれど、主人公を取り巻く女性の描き方も面白かった。

マタギの里で育った幼馴染の女と、街育ちでマタギの里に飛び込んできた女。マタギの里で育った女が幸せになって街育ちの女は「やっぱり街育ちじゃ駄目だな」的な展開になるかと思いっていたのに、そうはしなかったあたりも良かったと思う。

実際、今までとは違う価値観で生きる家に嫁いだ女は昔から大勢いたのだもの。なんとなくだけど、作者は女性に優しい人なのではないかな……って気がした。

ちょっとした視点や描写が男性作家らしからぬところが多いように思った。

長い作品なので途中、中弛みする部分もあったけれど、頑張って読む価値のある作品だと思う。

ただ残念なことに、この作品は絶版中になっていて紙媒体だと中古でしか手に入らない。

最近、電子書籍版が発売されたとのこと。ちなみに私は図書館で借りて読んだ。図書館も棚には並んでいなくて書庫から出してきてもらった。

こんな良い作品が埋もれてしまっているとは、なんてもったいないのだろうと残念に思う。

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白い木蓮の花の下で
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