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正体 染井為人 光文社文庫

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染井為人の作品を読むのはこれで2冊目。ミステリは得意じゃないけど前回、間違って読んだ『鎮魂』が予想外に面白かったので「この人の書くミステリなら読んでみてもいいかな」と思い、読んでみたけどやっぱり良かった。

たぶん…だけど、私は染井為人の書く路線と相性が良いのだと思う。

ちょいとご都合主義的なノリが気になるところもあるけれど「まぁ…いいか」と思えてしまうくらいには気に入った。

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正体

ザックリとこんな内容
  • 埼玉で二歳の子を含む一家三人を惨殺し、死刑判決を受けている少年死刑囚、鏑木が脱獄した。
  • 脱獄した鏑木は東京オリンピック施設の工事現場、スキー場の旅館の住み込みバイト、新興宗教の説教会、人手不足に喘ぐグループホームと様々な場所で潜伏生活を送りながら捜査の手を逃れ、必死に逃亡を続ける。
  • 果たして鏑木が逃亡する目的とは?

感想

ミステリが苦手な私がどうして染井為人の作品なら読めてしまうのか?

前回読んだ『鎮魂』の時もそうだったのだけど、主要登場人物に心を寄せることが出来るからだと思う。そして基本的に染井為人って作家さんは良い意味でクソ真面目な優等生的人物だか、主要登場人物達も作品全体を流れる空気感も「クソ真面目な優等生」になっちゃうのかなぁ…と思ったりする。

『正体』は主人公の死刑囚である鏑木の逃亡劇を描いた作品で、逃亡先でのエピソードを繋いでいく構成は古き良き時代の魔女っ子アニメ『花の子ルンルン』のようだった。ちなみに『花の子ルンルン』は旅先で出会った人達が最終回で大きな役割を担うのだけど『正体』もまた、鏑木が逃亡先で出会った人達がラストで大きな役割を担う。

鏑木が出会った人達はそれぞれに悩みを抱えながらも真摯に生きていて好感が持てた。方向性は違うけれど全員真面目人間…って感じ。思うに…作者である染井為人は真面目な人なのだと思う。

鏑木が出会った人達は肉体労働者、工場勤務のパート社員、介護職員と言った底辺職と呼ばれる人達だが、それぞれに一生懸命生きている。彼らは「だから底辺職しか就けないんだよ」とも思える行動をしてしまったりもするけれど、基本的には善良な人達。彼らは鏑木を好きになっていくのだけど、鏑木もまた彼らに助けてもらうことになる。

「結局、人間ってのは人と人との繋がりだよね」みたいなところが描かれていることに好感が持てた。

今回はネタバレ無しの感想なので「どうして鏑木は脱獄したのか?」とか「結局、鏑木はどうなったのか?」については書かないけれど、染井為人は自身が持っている主張を込めて『正体』を書いた気がする。なお。私は『正体』って言う小説は面白かったけれど、作者の主張に完全同意をする気は無い。

『正体』は面白く読ませてもらったけれど、鏑木があまりにも完璧超人なのが気になってしまった。正直、リアリティがなさ過ぎる。もう少し現実味のある人でも良かった気がする。思えば『鎮魂』の主人公も完璧な男だったなぁ。

ツッコミたいところもあったけれど『正体』はなかなか読み応えのある作品だったし、これを機に染井為人の作品はチェックしていきたいと思った。

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