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ひっ 戌井昭人 新潮社

私。戌井昭人がかなり好きなのだと思う。

この人の描く駄目人間はどうしてこうまで魅力的なのか?

2012年度の芥川賞候補だったとのこと。戌井昭人は何度となく芥川賞の候補に上がっているのに何故か受賞出来ていない。

芥川賞にしても直木賞にしてもガチャみたいな要素があると思う。

戌井昭人が芥川賞を取れないのは不思議に思うけれど、姫野カオルコが長年直木賞を逃しまくっていたことを思えば「そんなもの」なのかも知れない。

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ひっ

ヤクザの見習い、フィリピン逃亡、クラブのボーイ、売れっ子作曲家を経て、半島でひとり隠棲する伯父の「ひっさん」は、身内で唯一の大人の男だった。

おれは社会に出たものの、万年正月のような家庭内乞食に墜ち、あぶく銭を手に入れ、インドネパールを彷徨う。が、悟りも開けず帰国したら…。

自由と自堕落、人の生き死にをとことん描く、天衣無縫の傑作長篇。

アマゾンより引用

感想

題名の「ひっ」とは、ハチャメチャな人生を送った「ひっさん」の「ひっ」。主人公はひっさんで、その甥っ子によってひっさんの人生が語られる。

ひっさんはヤクザの見習いをしたり、ヤバイことに手を出してフィリピンに逃亡したり、クラブのボーイをしたり、作曲家としてそこそこ活躍したりと破天荒な生き方をしていて、甥っ子には常々「テキトーに生きろ」と言っていた。

ひっさんはハチャメチャな人なのだけど、どこか憎めなくて『男はつらいよ』の寅さんのような感じ。戌井昭人は寅さんが好きなのかな…なんて事を思ったりした。

ひっさんの生き方は「永遠の小学生男子」って感じで読んでいてとても楽しい。

例えば作曲家時代に人違いで刺されて重傷を負い、九死に一生を得た後「マグロが美味しいから」と言う理由から海辺に移住しちゃったり、養鶏場から逃げてきた鶏を捕まえて食べちゃったり。

ひっさんの周囲に集まる男達も魅力的で元プロレスラーだったり、洞窟で暮らす裸男だったり。だけど、すっごく楽しそうで羨ましくなってしまった。

「男はいくつになっても子ども」と言う言葉があるけれど、まさにそれ。戌井昭人の描く大人げない男は実に良い。

物語の途中、「テキトーに生きろ」と言うひっさんの言葉を過剰解釈して、テキトーどころかクズに成り下がった甥っ子が叔父さんから「テキトーでもなんでもねぇよ」と説教される場面があるのだけど、そのやり取りはかなり好きだ。

「憎めない駄目人間」って言うのは憎くめないだけの理由がちゃんとあるものだな…と感心してしまった。

軽めの文章で短い作品なので2時間弱で一気読みしてしまった。

「なんだか長い作品を読むのはシンドイし楽しい話が読みたい」と言う人に是非オススメしたい。

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白い木蓮の花の下で
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