染井為人の作品を読むのはこれで4冊目。私はミステリが得意じゃない…と言い続けているけれど、染井為人が好きみたいだ。今まで読んだ作品…全部好きとかLOVEが過ぎる。
たぶん…だけど染井為人とウマが合うだけなんだと思う。肌感覚で好き…と言うか。もはやコイツは理屈では語れない。
今回は芸能界がテーマの短編集。これまで読んだ3冊に較べると軽いノリでミステリ小説ではない。「最近『推しの子』とか流行ってるし、読んでみようかな~」くらいのノリで読んだけど、なかなか良かった。
芸能界
- 芸能界をテーマにした短編集。
- 長年在籍したプロダクションを退所する俳優。人気女優を10年かけて育て上げた辣腕マネージャー。Instagramにハマったベテラン女優。容姿端麗な若い男たちのミュージカルを仕切る女性プロデューサー。容姿を弄るネタで30年笑いをとってきた漫才コンビ等、の人生を切り取る。
感想
芸能界をテーマにした短編集…とは言うものの、物語の展開は「ありがち」だし「王道」って感じでひねりは無い。だけど人間はたまに最初からラストを知っている時代劇を欲する時がある。どれもこれも驚きこそなかったけれど、なんか良かった。
特に気に入ったのは漫才師が主人公の話。漫才コンビをテーマにした短編小説はいくつか読んだことがあるけれど、レベルが高いと思う。漫才師に限ったことではないと思うのだけど「仕事上の相棒」って友達や恋人、夫婦とはまた違った絆があると思う。付き合いが長ければ長いほど存在は大きくなるし、漫才師のように四六時中一緒にいるとなれば特別な思い入れを持ったりするのではないだろうか。ネタバレを避けたいので仔細は書かないけれど、ひと言で言うとエモかった。
インスタにハマって道を踏み外してしまう女優の話は芸能界の枠組みを越えて「あるあるだなぁ~」と思ったし、娘が芸能界デビューして女優になる父親が主人公の話も素敵だった。
全編通して感じたのは「芸能界がテーマではあるけど結局のところ人間関係を描いた作品ばかりだな」ってこと。家族だったり、仕事仲間だったり、周囲で支えてくれる人達だったり。『芸能界』に収録されている全ての物語がハッピーエンド…って訳ではなかったけれど、どれもこれも面白かった。
私自身は日頃、テレビはドラマも歌番組も観ないので芸能界には疎いのだけど、芸能界テーマの作品は好きかも知れない。これって野球しないのに野球漫画が好きだったり、将棋しないのに将棋小説が好きなのと似ているのかも。
芸能界がテーマの小説って今までは「芸能界に興味ないから」と避けていたけど、小説のテーマとしては面白い題材なんだと今さらながら気がついた。
それはそれとして染井為人の作品は今後も追っていこうと思う。