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羊と鋼の森 宮下奈都 文春文庫

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『羊と鋼の森』は第13回本屋大賞受賞作。第154回の直木賞にもノミネートされいて、当時はかなり話題になっていたと記憶しているけれど、なんとなく今まで手に取らずにきてしまった。

題名がなんとも少女漫画ちっくで「どうせ小綺麗な男の子が自分探しをする厨二病的な物語でしょ?」とイメージしちゃって「読もう」と言う気持ちになれなかったのだ。

それなのに突然「読んでみてもいいかな?」って気持ちになったのは私自身が毎日ピアノを弾くようになったから。私が弾いているのはピアノではなくてピアノっぽい音が出るキーボードなのだけど、子どもの頃はピアノを習っていてピアノのある家で大きくなった。

毎日キーボードを弾く中でふと「そう言えば調律師が主人公の小説があったっけか…」と思い立ち『羊と鋼の森』を読んでみることにした。

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羊と鋼の森

ザックリとこんな内容
  • 主人公の外村は高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会ってい、ピアノ調律の世界に魅せられてしまう。
  • 外村は調律師専門学校を卒業後、板鳥と同じ楽器店に入社し調律師として働ききじめる。
  • ピアノを愛する双子の姉妹、調律師の先輩、そして天才板鳥との交流を通じて外村は調律師として成長していく。

感想

私が『羊と鋼の森』を読まず嫌いしていた理由の一つに「題名からして少女漫画ちっく」ってところがあるのだけど、それについては大当たり。なんとなく少女漫画の空気漂う作品だった。

だけど読まず嫌いしちゃった事については「ホントごめん」って感じ。少女漫画ちっくだったし厨二病的なノリもあったけれど、そこのところを差し引いても充分お釣りがくるくらいには良かった。

じゃあ「何が良かったのか?」って話だけど、主人公の青年が仕事に一途だ…ってところが良かった。主人公の外村は天才調律師、板鳥のピアノ調律に魅せられて自分も調律師の道を進むのだけど、とにかく真面目な好青年。「仕事に真面目」な人って応援したくなっちっちゃうよね…って話。

外村が出会う人達はそれぞれ個性的で外村は周囲の人達と関わることで調律師として成長していく。私が特に気に入ったのは外村の先輩達が全員、外村に優しい人間ではなかった…ってこと。決して悪い人ではないのだけれど、外村に当たりが強い先輩もいて、それが妙にリアルだった。

外村は決して要領の良いタイプの人間ではなくて、努力を積み上げていくタイプの人間だった…ってところにグッときた。「人間やればできる」と言うけれど、まぁ普通の人間は大抵「やれない」のだ。努力って誰でもできそうでいて、案外難しい。外村はそれをコツコツやれるタイプの人間だった。

『羊と鋼の森』はその文章や世界感の美しさが評価されたようだけど、私は成長小説としての良さの方に心を惹かれた。もちろん文章のや世界感の美しさも素晴らしかったけれど、私は外村が少しずつ成長していく姿にグッときた。

なお『羊と鋼の森』は映画化もされているようなので、また機会があれば映画も観てみたいと思う。

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