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らんたん 柚木麻子  小学館

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『らんたん』は作者、柚木麻子の出身校である恵泉女学園のを作った河井道と彼女とシスターフッド(姉妹のような絆)の契りを結んだゆりの人生を描いた大河小説。

柚木麻子は女子校をテーマにした作品を多数発表していて、女子校出身の私からすると「分かる~」と思う作品が多かったけれど、ここ数年は正直「ん~。これは無し」みたいな作品が多い。

結論から書かせて戴くと『らんたん』は私には合わなかった。批判的な感想になるので感想については柚木麻子が大好きな方は遠慮していただいた方が良いかもです。

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らんたん

ザックリとこんな内容
  • 作者、柚木麻子の出身校、恵泉女学園の創始者である河井道と彼女とシスターフッド(姉妹のような絆)の契りを結んだゆりの人生を描いた大河小説。
  • 映画『フォレスト・ガンプ』と同じ方式の「時代の事件全部乗せ」で有名人が多数登場。
  • 津田梅子からはじまる「女子教育と女性の権利」を軸とした歴史を一気に学べる秀作。

感想

前回『マジカルグランマ』を読んだ時に「柚木麻子の作品は、よほど評判が良くなければ、しばらくパスしようと思った。」と書いているのに、よほどの評判を聞いてしまったので、うっかり手に取ってしまった。

結果…イマイチでした。全否定はしないものの小説としては「無し」の部類。

「楽しく学ぶ近代女子教育史と女性権利問題」みたいな題名で発表された参考書なら100点満点を差し上げたと思うのだけど「小説」とか「創作」としては無し。

世の中にある創作物は神(創作者)が作りし物なので、神が作りたいと思えばそれを止めることは出来ない。だけど民草にも好みがあるぞ…って話。

『らんたん』は柚木麻子の出身高校の校祖である河井道が登場人物になっている…ってこともあって、登場人物に対する忖度が多過ぎる気がした。主人公カップルが大正義でそれ以外の登場人物に対するdisが酷い。

シスターフッド(姉妹のような絆)がテーマと言うことで、ある程度は仕方がないかとは思うものの、男性に対する視点があまりにも狭過ぎる気がした。

そして個人的に最も気に食わなかったのが津田梅子と大山捨松との関係と女性同士の感情のもつれ。「これは伝記ではなく小説だからヘーキヘーキ」って感覚だと思うのだけど、同性愛的感情と友情と自己肯定感からの嫉妬を混同しているところは辟易してしまった。

本当に申し訳ないけれど「柚木麻子はシスターフッドに乗っかりたかっただけなのでは?」と思ってしまった。そして「女性の権利とか友情を描きたい気持は分かるけれど、そこに男性disを入れる必要はないんですよ」とも思った。

例えば…だけど中山可穂は作品の中に男性の中の母性を描いていたりして、男性に関してもそこそこ描けている感があるものの、柚木麻子はそうじゃないところがどうにもこうにも。

河合道のシスターフッド的存在である渡辺ゆりの夫は理解ある好ましい男性ポジションではあったものの、私には「女性にとって都合の良い男性」に見えてしまった。それは『らんたん』の作中で散々っぱら描かれてきた「男性にとって都合の良い女性」の同類でしかない。

柚木麻子はかなり前から期待していたけれど「なんか違う」って気持ちが確定した。「もう読まない」と思いつつも評判が良いと「もう1冊読んでみてから…」とズルズルと関係を続けてきてしまったけれど、そろそろ決別する頃合いかもしれない。

ただ『らんたん』に関しては明治からはじまる女子教育と近代女性史を楽しく学ぶテキストとしは悪くないし「史実を盛りまくった創作である」ってことを理解して読むなら楽しい作品かな…とは思う。

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