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シャトウ・ルージュ 渡辺淳一 文春文庫

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私は今まで渡辺淳一のことを、ずっと「スケベ作家」だと思っていた。

渡辺淳一と言うと『失楽園』が有名だけど『失楽園』以外も不倫とか、セックスとか、そういうことばかり書いている人(初期の医療物は除く)だと思い込んでいた。しかし。どんな道でも究めれば大家となるらしい。

この作品はスケベながらも、面白かった。

スケベさにかけては、バリバリの官能小説(フランス書院とか系)ではなく、一般の小説棚に並べられる作家さんの中では、他の追随を許さないのではなかろうか。

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シャトウ・ルージュ

ザックリとこんな作品
  • 主人公は将来を嘱望される青年医師。
  • 主人公の妻はセックスが嫌い。
  • 主人公は妻をフランスの古城に閉じ込めて、その道のプロフェッショナルに「調教」を依頼する。
  • 異国の男たちによって弄ばれる妻を眺める主人公…

感想

性の技術云々を描きつつ、男女の恋愛感の違いを浮き彫りにしていて「なるほどなぁ」と感心してしまった。

女性には分からない男性の気持ち、あるいは男性には分からない女性の気持ちを、巧みに描いていたと思う。

「調教物」としても、そこそこに面白かった。

バリバリの官能小説だと、女性の目で読むと不愉快になるような描写が多いが、この作品ではその辺の匙加減が絶妙に良かった。

例えば、エロ小説の大家と言われる団鬼六の作品は男性にはウケが良いのかも知れないけれど、女性視点で読むと気分の悪くなる描写が多い。

藤本ひとみも不感症の女を調教する小説を書いていたが、渡辺淳一に較べるとヒヨコも同然だと思う。年季が違うと言うか、なんと言うか。

楽しく読ませてもらったが、ラストはちょっと残念だった。正直なところ……中盤あたりでラストが読めてしまうのだ。

「いやいや。そう思わしておいて、きっと吃驚するような、どんでん返しを用意してくれているんだ」と思いながら読んでいたのに、ありがちな形で終わってしまったのは、残念過ぎる。

ラストがあまりにも普通過ぎたせいで「小粒な作品」という印象を受けてしまった。

再読するようなタイプの小説ではないけれど、そこそこに楽しませてくれた1冊だった。

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白い木蓮の花の下で
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