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水たまりで息をする 高瀬隼子 集英社

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『水たまりで息をする』は第165回、芥川賞候補作。候補作止まりで受賞には至らなかったものの、かなり良かった。

私はまったくノーチェックで作者である高瀬隼子について全く知らないのだけど『水たまりで息をする』を読んで「とりあえず次回作のチェックをせねば」と、追っかけ体制に入った。

今回、軽くネタバレが入るのでネタバレNGの方はご遠慮ください。

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水たまりで息をする

ザックリとこんな内容
  • 主人公夫妻は30代で子どものいない夫婦。子どもがいない…とは言うものの、夫婦仲良く暮らしていた。
  • ある日を境に夫が風呂に入らなくなる。夫は水が臭くて体につくと痒くなると言い、入浴を拒み続ける。
  • 妻は夫にペットボトルの水で体をすすぐように命じるが、そのうち夫は雨が降ると外に出て濡れて帰ってくるようなる。
  • そんな中、夫の体臭が職場で話題になっていると義母から聞かされ、妻は「夫婦の問題」だと責められてしまう。
  • それでも夫は風呂に入ろうとはせずに……。

感想

とりあえず「夫が突然、風呂に入らなくなった」って設定が面白いと思った。唐突な書き出しなのだけど、経験を読むと「まぁ…ありそうではある」と納得がいく。

いきなりネタバレしてしまうと、夫は会社の飲み会で後輩から水をかけられた事をキッカケにして「皮膚に水がつくと痛くて嫌だからお風呂に入らない」と言うようになる。

「……それって、単純にメンタル的な病気ですよね?」と言ってしまうと、そこでドラマは生まれない。

普通の感覚で読むと主人公の夫は社会生活が上手くいかなくてメンタル病んじゃった人でしかないし、主人公が取るべき正しい道は「夫を精神科に連れて行く」ってことなのだと思う。

だけど、その流れはノンフィクションでやるべき事であって、小説となればそれだけじゃ駄目なのだ。

主人公は悩みながらも夫に寄り添い、どこまでも夫についていく。実のところ、その方法は正攻法とは言えないし「いやいや。他に方法はあったでしょ?」と思う。

だけど『水たまりで息をする』で描かれていたのは夫婦愛なのだと思う。その方法が間違っていようがなんだろうが「夫と共に生きる」と決めた妻を追っていくべきだと思う。

実のところ妻は、そこまで大それた覚悟があったとも思えないのだけど「夫婦ってそんなもの」と言ってしまえるレベルではある。

『水たまりで息をする』は「夫婦愛を描いた作品として素晴らしい」って以外にも推していきたいところがある。

主人公の夫がハマってしまった状況は誰にでも起こる恐怖なんだ…ってこと。

私はどちらかと言うと楽天的な人間だと思うのだけど、それでもちょっとしたボタンの掛け違いから鬱々としてしまう時がある。メンタルが不安定な時に背中を押されるような決定的な何かがあれば、主人公の夫のような状況にならない…とは言い難い。

『水たまりで息をする』は個人的に凄く面白かったし楽しく読んだのだけど、芥川賞を受賞出来なかった理由も少し分かる。

モヤモヤしたところをねじ伏せるだけの力と勢いが足りないのだ。淡々と書くのであれば吉村昭的な職人芸が必要だし、そうでないなら力と勢いがいる。残念ながら『水たまりで息をする』には、どちらも備わってはいなかた。

……とは言うものの、これかも高瀬隼子の動向には注目していきたいし、とりあえず他の作品も読んでみたい。

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