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リツ子その愛・その死 檀一雄 新潮文庫

最後に読んだのは何年前だったか……というほどに久しぶりの再読。

檀一雄といえば『家宅の人』と、この作品が代表作になるのだろうか。

ちなみに、この作品のタイルにもなっているリツ子は『家宅の人』に登場する主人公の妻とは別の人。

リツ子が亡くなって、再婚した女性が『家宅の人』の妻。再読するまでは、そんなことを考えたことが無かったのだが、今回は「2人の妻」について、あれこれ考えてしまった。

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リツ子その愛・その死

敗戦のあとさき、惑乱と混濁と窮乏の時代状況下、最愛の妻リツ子が結核に倒れた。

あどけない息子を抱え、看護、食料調達、借銭、医者探しに奔走する夫。救いを求める魂の叫びも病魔には届かず、リツ子はしだいに衰弱の度を深めてゆく……。

全てをむしりとられ、全てをなげうって懸命に生の再建を目指す夫婦の姿を通し、裸形の魂の美しくも凄絶な昇天を捉えた昭和文学の記念碑的長編。

アマゾンより引用

感想

久しぶりに読んでみたけど、やはり好きな作品だなぁ……と思う。

檀一雄の自分勝手さや、作家としての残酷さが見え隠れしながらも、病身の妻を看取る姿は神々しくさえある。

そして何よりも好きなのは「檀一雄の父性」が色濃く出ているところである。病身の妻に替わって、1人息子の世話をする作者は、子育てを楽しんでいる風に見受けられる。

エピソードの端々から「人間好き」の片鱗が見て取れて、非常に楽しい。

今回読んでみて考えた「2人の妻」のあり方というのは「どちらが、より愛されていたか」という意味ではなくて「女性として、人としてどちらが得な生き方だったか」というところで、あれこれ思った。

結論から言うと、断然リツ子の方が得だったんじゃないかなぁ……と思う。

夫に看取ってもらったから…って訳ではなくて、リツ子は精神的な面で奔放な人だと思われるので。夫に振り回されながらも、ちゃんと我がままを言える女性だったようだ。

その我の張り方は、同性の目からみても可愛らしいように思う。大人しく控えめそうに見えて、人生を楽しむ術を知っていたように思われる。

なんだか、こぅ……美しい野生動物のような印象。

いっぽう、この作品には登場しないけれど『家宅の人』に出てくる妻のヨソ子は、伴侶に甘えたりする術を知らなかったんじゃなかろうか。

当時の日本女性には、こういうタイプの人が多かったのかも知れない。個性的で面白い人だと思うのに、気持ちの柔らかさに欠けるような気がする。

「奥さん、なんだか損なクジばかりを引いちゃってますね…」と同情せずにはいられない。

今回再読してみて驚いたのは作品は「リツ子の死」で終わっているのかと思っていたら、葬儀からその後日談まで書かれていたという点である。

きっと前回読んだ時は、自分の感情として「リツ子の死=作品の終結」と受取ってしまっていたのだと思う。

今回、丁寧に読んでみて、リツ子の死以降が丁寧に書かれていることに感動した。檀一雄の傲慢で我がままな視線がとても良かった。

年齢を重ねて行く過程で、何度も読み返したい作品だな……と思った。

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