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わたつみ 花房観音 中央公論新社

果ての海』が面白過ぎてビックリだったので、続けて花房観音の作品を読んでみた。

『わたつみ』は『果ての海』とは長編の異なり、連作短篇方式なのだけど、雰囲気やノリは似ているし「女の生き方を描いた作品」と言う意味では方向性は同じ。

果ての海』とはタイプの違う作品だったし、私は登場人物達とは違った環境で生きているけれど、どこか通じるものがあって夢中になって読んでしまった。

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わたつみ

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ザックリとこんな内容
  • 物語は映画製作の夢破れて故郷に戻ってきた京子を中心に展開する。
  • 強固は東京を離れ、実家からほど近い水産物加工工場で働き始める。
  • 田舎の水産加工品工場で働くのは地元の女性達。
  • 元夫と常時を交わすシングルマザー、介護のストレスを発散するかのように出会い系サイトにハマる女、夫婦で流行らないカフェを経営する女…タイプの違う女達の生き方を鮮やかに描く。

感想

『わたつみ』は田舎町設定じゃなくても良かったかな…と思った。

物語の舞台は田舎町の水産加工工場なのだけど、ここで描かれている物語はどこにいても起こりうることばかりだった。

  • 夢やぶれて実家に戻った独身女性
  • 離婚して子育てをするシングルマザー
  • 30代で親と暮らす独身女性
  • 介護のストレスを出会い系で発散する女性

……どの女性にも共通するのは「一般的に見てパッとしない女性」ってこと。小説の主人公って、どうしても「ハッとするような美人」だったり「一見すると美人とは言えないまでも、どこか異性を引きつける魅力のある女」だったりするのことが多いのだけど『わたつみ』の主人公達は「どこにでもいそうな中年女性」ってところが良かった。

全員、それぞれに立ち位置が違うのだけど、それぞれちゃんと言い分があって、正しいとは言えないまでも一生懸命生きている。そこが良かった。

そして、なんだろうな…女性の性的な部分を丁寧に描いていたところがとて良かった。

当たり前だけど女性にも性欲がある。女性の性欲をテーマにした作品は掃いて捨てるほどあるけれど主人公が「普通の女性」ってパターンは珍しいと思う。映画を撮っていた京子だけは「才能のある女性」として描かれているものの、他の女性達はどこにでもいそうな人達ばかりだ。

『わたつみ』の中では『果ての海』のような大きな事件は起こらなくて「田舎の街で起こったちょっとした騒動」程度の話しか出てこないのだけど、その分リアルな感じがした。

作中の誰に共感するかは自分の置かれた立ち位置によって変わると思うのだけど、どの女性も「ああ…こういう人っているよね」みたいな既視感を覚えるので、誰か1人にのめり込まなくても、それなりに楽しめるのではないかと思う。

メイン主人公の京子については「ちょっと話が上手いこと進み過ぎる」とは思ったけれど、『わたつみ』は京子ではなく、京子の周囲の女性達の生き方を感じる作品なのかも知れないな…と思ったりした。

ちょっとエッチな感じの作風なので苦手な人もいると思うけど、どうやら私は花房観音の作風はものすごく好みみたいだ。続けて他の作品も読んでみたい。

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白い木蓮の花の下で
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