読んだ本の『50音別作家一覧』はこちらから>>

支援学校を卒業したら…

記事内に広告が含まれています。

先日、パート先である放課後等デイサービスを利用している支援学校中等部のお子さんから「僕、支援学校を卒業したらここで働きたい」と言われた。

放課後等デイサービスって障害を持ったお子さんが利用する施設だけど、事業所によって利用者の層が全然違う。発達障害とか俗に言う「グレーゾーン」のお子さんが多い事業所もあるけれど、パート先は重度障害の方ばかり。

「ここで働きたい」と言ったお子さんは知的障害こそないけれど、重度の脳性麻痺で食事も排泄も全介助。ただ話をしていても「このお子さんは本来、頭良いんだろうなぁ」と思うところがあって、本人も「自分は身体こそ動けないけれど、もっとやれる事があるはず」と言う意識を持っているように見える。

だけど現実問題として、彼が支援学校を卒業して放課後等デイサービスで働くことは不可能に近い。

例えば……の話。障害があっても彼がゴリゴリとパソコンを使える人間になって、事務を一手に引き受けることが出来たりすれば、正社員は無理でも働ける可能性はあると思う。

または障害者系の施設で必要とされる専門職(相談支援専門員とか心理士)の資格を取れば、周囲のサポートを受けながらでも働くことは出来るかも知れない。

だけど彼が支援学校でしている事…と言うと身体的な訓練がメインになっていて学力面では決して高いとは言えないのだ。同じ年頃の子ども達が因数分解をする時、彼には「手を使う訓練」として塗り絵の宿題が出たりする。

このままだと彼は大学どころか普通科高校に進学することも不可能。支援学校の中等部を卒業したら、次は支援学校の高等部に入学してそれが最終学歴になってしまうだろう。

彼は卒業後、障害者の通うデイ的なところに通うことになるだろうし、親が老いて彼の世話ができなくなってくれば施設に入所することになると思う。

重い障害を持った子の場合、将来の夢云々…以前に支援学校を卒業した後の居場所づくりが大問題。

テレビ等で取り上げられるようなキラキラした障害者は一握り。

大泉洋が主演して話題になった『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』のように暮らすことが出来れば良いけど、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』のモデルになった鹿野靖明さんはある程度の年まで健常者として暮らしてきて人なので、実のところ最初から支援学校で育った人達とはベースが違っている。

重度障害を持っていても知的障害が無い(または知的障害の度合いが軽い)場合、身体的な訓練だけでなくパソコンを使った教育を進めていくとか出来ないものなのかなぁ。パソコンとインターネットが使えたら、障害者の世界はもっと広がると思うのだけど。

「僕、支援学校を卒業したらここで働きたい」と言ったお子さんに対して、私はズルイ…大人らしい返答をするしか出来なかった。残念だけど今のままでは彼は社会に出て働くことができない。

「私が彼の親だったら…」と思ってモヤモヤするのだけど、私は他人で彼がデイにいる時に楽しく過ごせるようサポートするのが仕事なので、どうしようもない。彼の将来は彼自身とご両親が考えることで、私達職員はサポーターでしかないのだ。

関わっている子ども達には全員漏れなく幸せになって欲しいと思うものの、ずっと一緒にいられる訳じゃないからなぁ。

今の仕事は大好きだけどモヤモヤすることが多い。「それはそれ。これはこれ」として受け流していくことも必要なんだろうな…と思いながら働いている。続きを読む→知的障害者の性欲と性教育。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
仕事
スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました