「女子校」を舞台にした女子高生の青春を描いた物語だった。
ライトノベルでヒットした『マリア様が見てる』よりも大人向け。それでいて純文学未満ってところだろうか。好きな人は好きな世界だと思う。特に女子校出身者は。
終点あの子
プロテスタント系女子高の入学式。内部進学の希代子は、高校から入学した奥沢朱里に声をかけられた。
海外暮らしが長い彼女の父は有名なカメラマン。風変わりな彼女が気になって仕方がないが、一緒にお昼を食べる仲になった矢先、希代子にある変化が。
繊細な描写が各紙誌で絶賛されたオール讀物新人賞受賞作含む四篇。
アマゾンから引用
感想
かく言う私は女子校出身なのだけど、それほど好きなタイプの話ではなかった。
ただ、女子高生の描き方は上手いと思った。思春期であるがゆえの無知、傲慢、清純……。 ちょっとした描き方が女性作家さんならではの繊細さで、女子校出身者としては「あるある」と相槌を打つこと数回。
女同士のドロドロした世界や、憧れと愛情と憎しみが入り混じった複雑な感情はよく描けていたと思う。
しかし物足りない。物足りない原因は分かっている。この作品は章ごとに主人公が変わるのだけど、主人公達はみな「結局は良い子」という枠におさまっているからだと思う。
規律正しい女子校に通う女子高生と言っても、誰もがみな「良い子」とは限らない。
身持ちを崩す子もいれば、駄目なループにハマっていって、目茶目茶な人生を歩む子もいる。ライトノベルの世界なら「みんな良い子」でも通用すると思うのだけど、大人が読む小説として出すのであれば、綺麗ごとだけでは物足りない。
もし……作者が「女同志の恋愛」に焦点を当てて、もっとドロドロと描いていこうとするならば「良い子」だけの世界でも、それなりに読ませる事が出来ると思うのだけど。
悪くは無いと思うのだけど、この路線だと頭打ちするのは目に見えている。細やかな感情を描くのは得意そうな感じなので、次回作は違う路線を期待したい。