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映画『ミッドサマー』感想。

猛烈に面白い映画を観てしまった。2020年はコロナの影響で、自宅で沢山映画を視聴したけれど『ミッドサマー』は2020年に観た映画の中でも1、2を争う面白さだった。

……とは言うものの『ミッドサマー』は万人に向けてはオススメしない。

グロ耐性の無い方やホラー系の作品が苦手な方、メンタルが弱っている方は観ないで戴きたい。精神的にやられると思う。「大丈夫じゃないかも」って思った方は観ない方が良い。

ものすごく簡単に『ミッドサマー』を説明するとアメリカの大学生がスウェーデンのカルト的な共同体で体験した出来事を描いた作品。ちなみに題名になっているミッドサマーは夏至祭を意味している。

今回は壮大なネタバレ込、考察込の感想になるのでネタバレNGの方はご遠慮ください。

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ミッドサマー

ミッドサマー
Midsommar
監督アリ・アスター
脚本アリ・アスター
製作総指揮フレドリク・ハイニヒ
ペレ・ニルソン
ベン・リマー
フィリップ・ウェストグレン
出演者フローレンス・ピュー
ジャック・レイナー
ウィリアム・ジャクソン・ハーパー(英語版)
ヴィルヘルム・ブロングレン
ウィル・ポールター
音楽ボビー・クーリック(英語版)
公開アメリカ合衆国の旗 2019年7月3日
スウェーデンの旗 2019年7月10日
日本の旗 2020年2月21日

あらすじ

アメリカで学ぶ大学生のダニーは精神的に不安定な状態にあった。ダニーの妹は両親を道連れに一酸化炭素中毒で無理心中していて、ダニーは家族を失ったトラウマに苦しみ続けていた。

ダニーの恋人のクリスチャンはダニーを重荷に感じながら別れを切り出すことが出来ずにいた。

ある時、クリスチャンは大学の友人であるペレから「自分の一族の故郷、スウェーデンのホルガで夏至祭が開催される。夏至祭は90年に1度しか開催されないので見に来ないか?」と誘われる。

大学で文化人類学を専攻するクリスチャンは学問的関心もあってホルガ行きを決め、仕方なく恋人のダニーも誘う。

ダニー達はスウェーデンへ渡り、ペレの案内でヘルシングランド地方に位置するコミューンであるホルガを訪れた。

ダニー達大学生は森に囲まれた草原という幻想的な風景と白い服を着た親切な村人たちに魅了される。

ダニー達は同じくよそ者で、ペレの兄弟分のイングマールに誘われてロンドンからホルガにやってきたサイモンとコニーのカップルと合流し、イングマールからマジックマッシュルームを勧められる。

キノコによる幻覚の中で、ダニーは妹の幻を見る。村には夜が訪れるが、白夜のためいつまでも昼のような明るさのまま。

翌日から始まる夏至祭はただの祝祭ではなく、ペイガニズム(自然崇拝)の祭りだった。そうとは知らずに参加したダニーは、不安と恐怖に苛まれていく。

草原のテーブルでの全員そろっての食事など夏至祭の儀式が粛々と進むが、儀式が始まると、ダニー達大学生に緊張が高まる。

ホルガの中の年長者の2人が高い崖の上に姿を現し、おもむろに身を投げるという棄老の儀式が行われた。

身を投げた者のうち女性は即死するが、男性はまだ生きていて、村人たちは男のうめき声をまねながら身をよじって叫び、槌で頭を叩き潰してとどめを刺す。

村の長老であるシヴは、ショックを受けたダニー達に、これはホルガの死生観を表現した完全に普通の文化であり、村人は全員72歳になると同じようなことをしなければならないのだと説明する。

ダニー達はペレの懇願と、夏至祭の研究で文化人類学の論文を書かなければならないというジョシュの必要性からホルガに残ることにするが……

カルト集団に取り込まれていく恐怖

『ミッドサマー』はカルト集団の奇妙な祭りに取り込まれていく大学生達を描いた作品…ってことなのだけど、とにもかくにも怖かった。

カルト集団(教団)と言うと、オウム真理教が有名だけど、私は『ミッドサマー』を観てオウム真理教よりも昭和に流行ったヤマギシ会を連想してしまった。

たぶんアメリカのアーミッシュなんかもそんな感じ。

ヒロインのダニー達が訪れた「ホルガ」と呼ばれる共同体はアーミッシュの人達が着るような服装に身を包んでいて、昔風の暮らしを続けていた。

私が子どもの頃、近所にヤマギシ会のグループ購入を利用している家があったのだけど、親からは「ジロジロ見ちゃいけません」とキツく言われた記憶がある。

コニー達大学生が「ヤバイ集団」に取り込まれて大変なことになってしまうのだ。

ドラッグが大きな鍵になっている

日本では覚醒剤をはじめとする「ドラッグ」が法律的に禁じられているので、いまいちピンとこない部分があるかも知れない…ってことで先にご説明しておくけれど『ミッドサマー』ではドラッグが大きな鍵になっている。

何をするにしても「とりあえずドラッグをキメてから行動する」って感じ。キノコだったり、煙だったり、お茶だったり。最初から最後までカジュアルにドラッグ。

どうやらホルガの夏至祭は「ラリっていこー!」ってのがデフォルトになっているらしい。

ヒロインのダニーは最初のうちこそドラッグを拒否していたけれど、だんだんカジュアルにドラッグを受け入れていくようになる。

それどころかダニーはメイ・クイーン(5月の女王)を決めるダンスの際は、バッチリドラッグをキメてノリノリで踊りまくっている。

恐るべしドラッグパワー。良い子は絶対にドラッグには手を出してはイケナイと改めて思った。

夏至祭について

北欧では夏至の頃、太陽がずっと昇っている「白夜」がある訳だけど『ミッドサマー』ではホルガで行われた夏至祭がテーマになっている。

お祭りと言うと楽しく儀式をして、みなで飲み食いして…みたいなイメージがあるのだけれど、ミッドサマーの夏至祭では9人に生贄を捧げる儀式と言う設定になっていた。

9人に生贄はホルガ以外の人間が5名。ホルガの人間が4名と言う構成。コニー達大学生は、生贄&女王候補として、計画的にホルガに誘われていた。

9人生贄メンバー(死亡順)

ホルガの老人2名 

ホルガでは72歳になると夏至祭で生贄として捧げられることになっていて、自ら生贄として崖から身を投げ出す。男性は死にきれず、村人達から槌で顔面を滅多打ちにされてとどめを刺されている。

コニー&サイモン

ロンドンからやって来た恋人同士。夏至祭で老人が死んだことにショックを受け、ホルガから出ることを希望するが、引き離されて生贄にされる。特に悪いこともしていないのに酷過ぎる展開。最初に逃げ出す人間が殺されるのはホラーのテンプレだけど、まさにそれ。

マーク

ホルガの神聖な木にそうとは知らずに立小便をしてしまうことにより、生贄に選ばれる。ホルガの禁忌を破ったとは言うものの「知らなかった」ってあたりが気の毒過ぎる。ペレは意図的にマークに禁忌を教えなかったっぽい。酷い。

ジョシュ

ホルガについて研究していた黒人男性。ホルガにとって聖なる書である「ルビ・ラダー」を写真撮影して生贄に選ばれる。気の毒ながらも自業自得感あり。好奇心は身を滅ぼすの典型。

イングマール

コニーとサイモンを連れてきたホルガの若者。自ら生贄に志願する。ウキウキで生贄になってる感ある。

ウル

ホルガの人間。自ら生贄志願する。こちらもウキウキで生贄に。生贄は名誉職的なポジションみたい。

クリスチャン(ダニーの恋人)

メイ・クイーンとなったダニーから生贄として指名される。まさか恋人から見放されるとは…って感じだったけど「仕方ないか」的な部分も。

美しい映像が妙に怖い

『ミッドサマー』は前編を通して映像が実に美しい。

  • 白を貴重としたい衣装をまとった人達
  • 沈まない太陽と青い空
  • 緑輝く美しい景色
  • 鮮やかな花々

……怖い話でなければ、癒やし系映像としても通用するレベルで美しい。だけどカメラワークがものすごく怖い。

例えば、大学生一行が車でホルガの領域に突入していく場面では映像の天地が逆転している。三半規管がオカシクなって、軽く車酔いしたような状態になったと同時にホルガに到着する…と言う仕掛け。

一般的なホラー映画は暗闇の中で物事が進んでいくけれど『ミッドサマー』の場合は白夜の下、美しい光景の中で物事が進んでいく。

美しくて怖い…とか、今までにはなかった手法で妙に感心してしまった。

メンヘラヒロインが見つけた居場所

『ミッドサマー』のヒロインであるコニーは、物語の冒頭で「メンヘラで厄介な恋人」として描かれている。実際、コニー自身も心を病んでいてヤバイ状態だった。

普通なら心を病んだ人が謎の集団に連れ込まれたら最後、メンタルがズタボロになってしまいそうなのだけど、コニーはホルガで過ごす中で少しずつ立ち直っていく。

もっとも「立ち直っていく」と言っても、健全な形とは言い難いのだけど。

『ミッドサマー』を見て私が1番恐怖を感じたのは、心を病んだコニーがホルガの中で自分の居場所を見つけてしまうってことだった。

「これって、新興宗教でありがちな展開ですよね?」と。

その集団がどれほど狂気満ちていたしても、その中で幸せを見出してしまう人がいるのも事実なんだな…と変なところで感心してしまった。

恋人のクリスチャンが自分以外の女性とセックスをしている場面に遭遇したコニーは、深くショックを受けて嘆き悲しむのだけど、その際、ホルガの女達はコニーを囲んでコニーと共に悲嘆の声をあげる。

……圧倒的な共感と受容。

これは心理学的に成り立っている手法。ホルガだけでなくカルト系の新興宗教等では当たり前の手法として使われているのだと思われる。

カルトとか新興宗教とか、ヤバイ人達には近づかないが吉。「自分は絶対に大丈夫」とは言い切れないところが怖過ぎる。

結果、コニーは恋人のクリスチャンを捨ててホルガで女王として生きていく道を選ぶ。

「それってどうなの?」って気持ちになるものの、物語前半では身なりに構わず、ダサダサで可愛くなかったコニーがボルガに来てから、どんどん美しくなってくところに注目して戴きたい。

表情も柔らかくなり生き生きしている。

「なんだかなぁ…」な結末ではあるものの、ボルガがコニーの居場所となったのは間違いないのだ。

伏線が凄い!

『ミッドサマー』はとにかく怖くて気持ち悪い作品なのだけど、作り込みが素晴らしくて「伏線を考察する」ってだけでも、ものすごく楽しい。例えば……

物語の冒頭でコニーの部屋に飾っている絵。これは『王冠を戴く金髪の少女とクマ』と言う題名の絵で、スウェーデンのヨン・バウエルって人の作品。

王冠をかぶった金髪の少女が熊をなでている様子が描かれているのだけど、王冠をかぶった少女はコニー自身で、熊は恋人のクリスチャンを示唆していると思われる。クリスチャンは熊の皮をまとわされて、生贄として焼き殺される。

最初はふんわり観ていたのだけど、後になってから「えっ? ちょっと待って。最初に出てきたあの絵って…」と気がついた時の驚きたるや!

『王冠を戴く金髪の少女とクマ』以外にも映像内には随所に伏線が張られていて、最後まで見ると「あああああっ」ってなること請け合い。「よくぞ、ここまで凝りまくって作ったね」と、ただただ感心してしまった。

伏線については書き出していたらキリがないので、この辺でとどめておくけれど、別の機会に伏線について記録しておきたいな…と思ったりするレベルで作り込まれていた。

……と私は凄く楽しんだのだけど、最初にも書いた通り万人向けではないし、メンタルが弱っている時には観ない方が良いと思う。

くれぐれもご視聴は計画的にお願いします。

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白い木蓮の花の下で
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