向田邦子の作品は、かなりの数をこなしていると言うのに、読書録には1冊も上げていないのが以外だった。
HPを立ち上げる前に読んだ物が大半だと思うけど、たまたま間が悪くて感想を書いていなかったりしたのだろう。今更だけど、ちょっと勿体無い。
夜中の薔薇
気に入った手袋が見つからなくて、風邪をひくまでやせ我慢を通した22歳の冬以来、“いまだに何かを探している”……(「手袋をさがす」)。
凛として自己主張を貫いてきた半生を率直に語り、人々のありふれた人生を優しい眼差しで掬いあげる 名エッセイの数々。
突然の死の後も読者を魅了してやまない著者最後のエッセイ集。文字が大きく読みやすく、カバーの絵も美しくなった新装版。
アマゾンより引用
感想
この作品は飛行機事故で無くなった向田邦子の出した最後のエッセイ集らしい。(文庫本にそう書いてあった)。
仕事の事や、旅行の話、人の話、子供の頃の思い出など、売れっ子作家ならではの「書きたいものだけ集めました」というような、一貫性のない1冊だった。
向田邦子というと、インテリ系の働く独身女性にやたらと支持されているような節がある。
私もまぁそこそこに好きだけど、今回の作品を読んでみて、どうして働く独身女性に人気があるのか、その理由が分かったような気がした。
「清貧なんて言葉は大嫌い」「謙遜はおごりと偽善」と言い切ってしまう作者の虚勢は天晴れだけど可愛げがなく、そうやって虚勢を張ってしまうところが、痛々しくてまた魅力なのかも知れない。
向田邦子のエッセイを読んでいると「頑張っていい女でいなきゃいけい」という強迫観念のような物を感じる。
もっと、だらけてたって良いのになぁ。
私が彼女の伴侶だったら「馬鹿だなぁ。コイツ」とか思っちゃうだろと思う。頑張り屋さんなのだろうけど、甘え下手な印象。
エッセイ集としてはイマイチだったと思う。いくらなんでも、ごった煮過ぎ。
もう少しテーマというか、一貫性があった方が本として面白いと思うのだけど、最後の作品集とのことなので、そうも言っていられなかったのだろう。
ちなみに私が向田邦子の作品が好きなのは、古き良き昭和の風景が楽しめることと、ご飯が美味しそうに見えること。
このエッセイに登場した食べ物も美味しそうだったので、自分でも作ってみようと思う。