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曠吉の恋 昭和人情馬鹿物語 久世光彦 角川書店

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やっと、久世光彦の作品から卒業出来ると安堵した。

やっと、納得のいく作品に出会えたような気がする。

もっとも『早く昔になればいい』とか『陛下』に並ぶほど面白かったとは言わないけれど、作者の年齢を考えれば充分過ぎるほどの仕上がりだと思う。

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曠吉の恋 昭和人情馬鹿物語

昭和8年、巣鴨の水道屋の次男坊・曠吉は、家業を手伝いながら、第1回直木賞作家・川口松太郎のような小説家になることを夢見ていた。

しかし頭の中に浮かぶのは、美しい女との××のことばかり。

曠吉は、様々な女と出会い、彼女たちに魅かれ、人生の愉しさ、儚さを知る。歳月を重ねながら、少年は一歩ずつ大人への階段を上っていく。

都々逸や小唄を小気味よく挿みながら、男と女の「情」を描いた、胸にしみいる人情小説の白眉。

アマゾンより引用

感想

東京の下町で暮らす職人、曠吉の恋を描いた連作短編集。

東京の「粋」がギュギュッっと詰まっている感じがして、とても良かった。

主人公にも魅力はあるけれど、主人公は狂言回しのような役割になっているので、本当の主人公は主人公が想いを寄せる女達だと思う。

情熱の恋ではなく「情」が勝っているタイプの恋愛小説は、どちらかというと好きな部類。その上「江戸の粋」とか「女の心意気」みたいな物が主題になっているのだから、たまらない。

いささか、やっつけ仕事的な部分も見え隠れするし、作品によっては安っぽい浪花節のような雰囲気があるのだけれど、全体的には良かったと思う。

それにしても、主人公のお相手が、すべて年上の女性……というのは久世光彦の好みなのだろうか?

こういう、しっとりとした女性を描かせたら久世光彦の右に出る人はいないと思う。美人じゃないけど色っぽい女。男性作家さんならではの筆だと思う。

久世光彦が亡くなってから「もしかしたら、好みの作品を読み溢しているかも」と思い、あれこれ当たってみたのだけれど、ハズレを引くことが多かっただけに、嬉しくてしょうがない。

今回の作品で久世光彦から卒業出来そう。

これからは、久世光彦の書いた作品でお気に入りのものを再読していくのだと思う。淋しいことだが「再読したい」という作品があるだけ幸せだ…とも思ったりする。

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白い木蓮の花の下で
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