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うちの父が運転をやめません 垣谷美雨 角川書店

『うちの父が運転をやめません』高齢ドライバーの免許返納をテーマにした作品。「垣谷美雨らしいテーマだなぁ」と感心した。

これまでも垣谷美雨は親の婚活や、親の遺品整理女性のお墓問題等、家族をテーマにした作品を生み出してきた。今回は最近話題の高齢ドライバー問題。

ここ数年、高齢ドライバーの事故が目立つようになっていて「高齢ドライバーの運転が怖い」と思う人もいれば「それでも免許返納したくない」と思う人もいて高齢ドライバーの免許返納は進んでいない。

そんなナイーブな問題が垣谷美雨の手にかかると、どんな風に調理されるのかと楽しみにして読み進めていった。

今回はラストのオチを含む感想になるので、ネタバレNGの方はご遠慮ください。

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うちの父が運転をやめません

ザックリとこんな内容
  • テーマは高齢者ドライバーの運転について。
  • 主人公の雅志は東京で働くサラリーマン。高校生の息子の伊吹と、デザイン会社で働く妻の歩美と暮らしていた。
  • ある日、雅志はテレビで高齢ドライバーの交通事故のニュースを見て「78歳っていえば…」。と自分の親のことが心配になる。
  • 雅志は夏に息子の息吹と帰省したとき、父親に運転をやめるよう説得を試みるが、失敗に終わる。
  • 通販の利用をすすめてみたり、高齢の両親を呼び寄せてや都会暮らしのお試し機関を設定したりするが、ことごとく失敗に終わる。
  • そんな中、雅志が

感想

読みやすさは天下一品で「流石は垣谷美雨!」と思える作品だった。読みやすいので長めの病院の待ち時間でもサクサク読める感じ。

『うちの父が運転をやめません』では、老父の免許返納問題だけでなく、高校生の息子の成長もテーマになっていた。

雅史夫婦は共働きで、ちゃんと手を掛けて育てていなかったと感じていて、「息子とは分かりあえていない」と言う設定になっていた。個人的には高校生の息子の話題を突っ込んできたのは余計だったかな…って気がする。

……と言うのも、テーマを欲張ってしまったために、リアリティが薄くなってしまっていて、何もかもが上手く進んていく展開は、どことなく漫画っぽい印象になってしまっている。

「高齢ドライバーが免許返納をしたがらない背景」については、しっかり描かれていたと思う。

高齢ドライバーと言っても都会で暮らす人と、田舎で暮らす人とでは随分事情が違うので、ひとくくりにして語ることは出来ないのだけど『うちの父が運転をやめません』の父親が暮らしているのは田舎の農村地帯。バス路線は廃止されていて、自動車がなければ生活していけないような場所。

主人公の雅志は父親に免許返納してもらうために様々なことをしてみるのだが、どれもこれも失敗に終わる。

そんな中、雅志が行き着いたのは「妻と別居して自分だけ田舎に戻る」と言う選択。

雅志は高校の同級生に薦められて「移動スーパー」をはじめ、買い物難民となっていた集落に生活必需品を運ぶことになる。息子の息吹は東京の私立高校から、雅史が暮らす田舎の農業高校に転校して田舎で暮らすようになる。

雅史の移動スーパーのおかげで、父親は免許を返納し、同じ集落の高齢者達も移動スーパーのおかげで、少しずつ免許返納をする人が増える…と言う展開。

……いくらなんでも、この展開は都合が良過ぎやしませんか?

都会の人間が田舎で暮らしていく…って展開に浪漫があるのは認めるけれど、田舎の悪い部分にはほとんど触れずに、楽しいところだけをピックアップしているのはどうかと思った。

「ビバ! 田舎暮し!!」みたいなノリが本当なら、若者は田舎から出ていかないだろうし、Iターン就職やUターン就職だって、もっともっと進んでいるだろう。

読みやすくて楽しい物語ではあるものの、あまりにも都合の良過ぎるオチだったので、読み終えた後に少し醒めてしまった。

「垣谷美雨の手にかかったら、高齢ドライバー問題はどんな風になるのかな?」と楽しみに読みすすめてみたものの、何の解決も提案もなく、ふんわり楽しくまとめられていただけだった。

私はイマイチ納得の出来ないオチだったし、好きな作品とは言えないけれど、それでも垣谷美雨の作風は大好きなので次の作品を楽しみにしようと思う。

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