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奇貨 松浦理英子 新潮社

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『奇貨』は『友愛小説』と言う位置づけらしい。

女性と恋する事が出来ず、男友達もおらず、自分と自分の性を持て余している私小説家の主人公とレズビアンの女性との同居生活を描いた物語。

いかにも松浦理英子が好みそうな話だなぁ…という印象で読み始めたのだけど、意外にも今までの作品とは切り口が違っていて新鮮だった。

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奇貨

男友達もなく女との恋も知らない変わり者の中年男・本田をとらえたのは、レズビアンの親友・七島の女同士の恋と友情だった。女たちの世界を観察することに無上の喜びを見出す本田だが、やがて欲望は奇怪にねじれる。熱い魂の脈動を求めてやまない者たちの呻吟を全編に響かせつつ、男と女、女と女の交歓を繊細に描いた友愛小説。

アマゾンより引用

感想

『奇貨』は作中、レズビアン、ヘテロ(異性愛者)の他に『半端ヘテロ』なる造語まで登場したりして、その類の事に興味の無い人には読み辛い作品かも知れない。

しかし、この作品はセクシャリティの問題を全面に押しているように見えて実はそうではないような気がしてならなかった。

松浦理英子と言えば「レズビアン」と「マゾ」と言う印象があり、もちろんこの作品にもその要素はふんだんに出てくるのだけど、この作品は「レズビアン」とか「マゾ」と言った枠をとっぱらったとしても面白く読めるのではないかと思う。

主人公と同居するレズビアン女性の七島が固執していた女性(半端ヘテロと呼ばれていた)のような人間は女性にも男性にもけっこういる。

私は思わせぶりな事をして相手をふり回すような人間は大嫌いなので、七島のように近づかないけれど「あぁ。そういう人って、いるいる!」と妙に感心してしまった。

もっとも、七島がその女性に振り回されただけで終わってしまっては、どうにも救いが無いのだけれど、ちゃんと区切りを付けた七島は実に天晴れだった。

作品の中で七島の言葉は凄く良い。

特にグッっときたのが「精神的なものでも性的なものでも高い水準で欲求を満たしてくれる相手なんて、一生に一人巡り会えたら幸運じゃない?」と言う言葉。

そして七島にとってのその相手は恋人でも友達でもないあたりが、なんとも。私はすっかり七島が好きになってしまった。

「惚れる」って感じではないのだけれど、可愛い後輩を愛でるようなそんな気持ち。

七島の人間性の話はともかくとして。

物語的にはハッピーエンドとは言えないラストなのだけど、読後感は悪くない。

犬身』の時は中途半端さ加減にモヤモヤしてしまったのだけど、この作品は綺麗に上手くまとまっていると思う。

あと補足なのだけど作者が初期に書いて未収録だったという『変態月』という作品も併録されている。

こちらは「松浦さんもこんな作品を書いていた時期があったのだなぁ」なと言う程度で、そこまで面白いと言うほどではなかった。でもファンなら読んでおいて損は無いかと思う。

今年(2012年)はまだ終わっていないのだけど、たぶん私が今年読んだ作品のナンバーワンになると思う。それくらい面白かった。

誰かと語り合いたい……色々と議論したいと熱く思ってしまうほどに。

図書館で借りた本なのだけど、手元に置いて何度も読みたいので改めて買おうと思えるほど大満足の1冊だった。

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