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僕に踏まれた町と僕が踏まれた町 中島らも 集英社文庫

中島らもは、けっこうご贔屓の作家さんだったりする。ゾッコン惚れこんで…というのではなく、ほどほどに好きというか。

野球で言うなら「手堅く送りバンドで塁に出て1点返してくれるバッター」って感じ。

文学ちっくな小説も、お笑い系のエッセイも、ほどほどに小細工がきいていて作品数が多い割に大ハズレ率が低いあたりも、お気に入り。

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僕に踏まれた町と僕が踏まれた町

ザックリとこんな内容
  • 中島らもの青春時代について書かれたエッセイ集。
  • 超有名進学校「灘校」で過ごした青春の日々。

感想

『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』は、お笑い系のエッセイ集。

中島らもの定番ネタである「若さゆえのアヤマチ」を披露しているだけの言っていまえば「なんてことのない話」ばかりが集めてあった。

「なんてことのない話」ばかりではあるけれど『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』は「笑いの中に哀しみアリ」といった雰囲気があって、なかなか良かった。

軽い文章でもって「プッ」と吹出してしまうような笑いのネタが炸裂する中で、とつぜん「悲哀」なんてのを繰り出されると、これが相当グサッとくるのだ。

街の雑踏の中で「ひとりぼっち」を確認する、あの感じと似ているかも知れない。

読ませる文章というよりもむしろ感じさせるという文章。現代風の「もののあはれ」といった感じだろうか。

今回のエッセイ集の中では、夭折した友人を偲んで書かれた一篇がとてもよかった。

何十年に一回かもしれないが「生きていてよかった」と思える夜があり、その思い出があれば、あとは「ゴミクズみたいな日々」であっても生きていける……醜く老いて「まんざらでもない」瞬間を額に入れてときどき眺めたりして……

あいつも、そうやって生きていれば良かったのにと作者が述懐するくだりは作者自身が「そうやって生きてきた」のだという軌跡が偲ばれてグッときてしまった。

オッサンになった中島らもは、先に逝ってしまった人から嘲笑されているような気がすると言いつつ、それでも「あいつも生きてりゃよかったのに」と思うあたりは生きていればこそ……の重みではなかろうか。

笑いの間にポイッと、重いネタを仕掛けておくあたりは、お笑い気質の人が使いがちな独特の照れ隠しなのだろうと思う。

軽く読んで、ブブッと笑って、ちょっと感じ入ってみたりして。

中島らも好きの方にオススメの1冊。
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白い木蓮の花の下で
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