『青いターバンの少女(真珠の耳飾の少女)』というフェルメールの画の少女が主人公の物語
……。と言っても、伝記物でもなんでもなくて、作者がフェルメールの画から話を引き出した完全な創作である。
何年か前に映画化されていて、興味はあったのだけど映画は観ず仕舞いで、ずっと気になっていたところに原作を発見したので手に取ってみた次第。
真珠の耳飾りの少女
16歳の娘フリートは、画家フェルメールの家の女中になったとき、失明した父の身の回りの世話をしていた経験を活かし、アトリエの掃除と整頓も任されることになった。
そんなフリートを待っていたのは、波乱含みの人間関係だった。
子だくさんで粗忽なため、アトリエの出入りを禁じられている夫人カタリーナとの確執、気丈で抜け目ない、夫人の実母マーリア・ティンスとの駆け引き、フリートを目の敵にし、意地悪ばかりする次女コルネーリアとの諍い、贔屓の肉屋の息子ピーテルがフリートに寄せる恋慕、フェルメールのパトロンである身分を悪用し、フリートに言い寄るファン・ライフェン……。
しかしある日、予期せぬ出来事が起こる。
フェルメールは、フリートが色彩と構図に豊かな感性をもっていることに気づき、顔料の調合を任せる。天才画家の絵画に心服するフリートは、旦那様への思いを募らせ、2人の親密さも徐々に増していく。
アマゾンより引用
感想
ヒロインは画家であるフェルメール家の女中さん。当節流行中の「メイド」なんてものじゃなくて、ガッツリ働く「女中さん」ってところがポイント。
少女が家族と離れて淋しかったり、フェルメール家についてあれこれ感じたりする様子は読んでいて好感度大。
プロテスタントの家庭で育った少女が、カトリックの家庭で働くことについての葛藤のようなものも興味深かった。
しかし、このこの作品のメインは「恋」だったりする。
結末から言うと少女の恋の相手は彼女の雇い主のフェルメールで、当然ながら結ばれることはないし、少女は彼女を慕ってくれる肉屋の若者と結婚する。
なんて言うのかなぁ。互いの魂が惹かれあうような結びつきって、いいなぁ……と思った。
なるべくして引き合っていくと言うのか。ドロドロとして恋愛でもなんでも無かったし、どちらかと言うと地味な話だったけれど、しみじみと切なくて素晴らしかった。
そしてフェルメールの自分勝手な芸術家っぷりも「やっぱり才能ある人は違うなぁ」と面白かった。
きっと少女は肉屋の若者の貞淑な妻として、それなりに幸せに暮らして行くのだろうけれど、フェルメールと過ごした時間は彼女にとって綺羅星のように輝き続けるのだろうし、ずっとずっと好きなのだろうと思う。
フェルメールに恋した少女は、しかし肉屋の若者と愛を育んでいくのだろうなぁ。切ないけれど、世の中そんなものだ。
心中とか逃避行があったりする、ぶっちぎりの恋愛譚も面白いけれど、こういう恋物語も良い。
久しぶりに自分自身の感覚に沿う恋愛物語で、非常に満足させてもらった1冊である。