以前『小学館のペーパーブックが凄い!』で、小学館が発行しているペーパーブックについて書いたけれど、私も購入して読んでみた。
遠藤周作の『フランスの大学生』は読んだ事があるのだけれど「推しのグッズは買っておかねば!」と言う精神から購入した。
完全に自慢でしかないけど、遠藤周作は文学全集も購入している。
普段はもっぱら図書館派だけど推し作家くらいはちゃんと手元に置いておきたい。
フランスの大学生
- 遠藤周作、幻のデビュー作。
- 一時絶版状態だったがP+D BOOKSよりペーパーブックとして再版。
- 1950年、遠藤周作は27歳のときに戦後初の公費留学生としてフランスに渡る。
- ドイツやフランスの文学について、ナチスの残虐行為について、信仰について等。
- フランス留学記から文学論まで内容は多岐にわたる。
- 若く瑞々しい文章。遠藤周作ファン必読の1冊。
感想
遠藤周作の幻のデビュー作と言われた『パリの大学生』。文学的な価値とか、作品のレベル云々は正直「まぁ、別に」くらいのものだと思う。
良くも悪くも普通のエッセイ。エッセイレベルで言うのなら、世の中にはもっと面白かったり、 ためになるエッセイがワンサカある。
だけどあなたが「遠藤周作が好きなんです」ってタイプなら、是非読んで欲しいと思う。
このエッセイを読まなくたって、遠藤周作の作品を楽しむことは出来るけれど、このエッセイを読む事で、よりいっそう遠藤周作を理解出来ると思う。
例えば…
遠藤周作の作品の中で『月光のドミナ』はSMがテーマになっている。遠藤周作と言うと「キリスト教」ってイメージが強い作家なので、はじめて読んだ時は「えっ?ナニコレ?」と動揺した。
『月光のドミナ』フランスに留学した若者がSMの世界にハマり、泥沼に足を突っ込んでいく物語で「そっちに行っちゃ駄目だ」と分かっていても、性癖から逃れられない人間の哀しみを描いている。
『フランスの大学生』に掲載されている最初の話『恋愛とフランス大学生』には「もしかしたら『月光のドミナ』の発想の原点になっているのかな?」と思ってしまうようなエピソードが書かれている。
『フランスの大学生』には『月光のドミナ』以外にも「もしかして、この作品の発想の原点はここかな?」と思うエピソードか沢山あるので、遠藤周作の作品を読み込んだ人ならかなり楽しめると思う。
遠藤周作は「狐狸庵先生」のシリーズで「自分は灘高校の落ちこぼれるだった」みたいな事を何度となく書いているけれど、公費留学生に選ばれるのだから「落ちこぼれ」だなんて、とんでもない話だ。
『フランスの大学生』を読むと「遠藤周作先生…やっぱり凄い人ですやん…」と実感すること請け合い。端正な文章が際立っていて気持ちが良い。その分「真面目過ぎるかな?」って感じはちょっとある。
そんな真面目留学生の遠藤周作が月日を重ねて「狐狸庵先生」になるのだなぁ…と思うと、感慨深いものがある。
世の中に遠藤周作が好きな人がどれくらいいるのか知らないけれど、遠藤周作好きの人に全力でオススメしたい1冊。この1冊を読むことで、遠藤周作文学がより一層楽しめると思う。