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影を歩く 小池昌代 方丈社

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相変わらず切れっ切れの面白さだった。

以前『裁縫師』と言う作品を読んた時に「最盛期の小川洋子と河野多惠子を足して2で割ったような作風」と書いたけれど、まさにそれ。小川洋子とか河野多恵子の好きな人なら高確率で刺さると思う。

小池昌代の凄いところは年齢を重ねてもなお作品の勢いが衰えないところにある。

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影を歩く

私は小川洋子の作品を猛烈に愛していてるけれど、残念ながら小川洋子は作家としてのピークを過ぎちゃった感がある。

ここ数年の作品は「そこそこ面白いけれど、かつての勢いは無いよね…」としか思えなくて、毎回物足りない感じがしている。

小池昌代はそれがない。いつ読んでも切れっ切れ。いつ読んでも新鮮。

ちなみに2019年現在、小池昌代は59歳。小川洋子は56歳。年齢的には変わらないけれど、小川洋子は作家として守りに入っちゃってる感じがする。

『影を歩く』は短編集。

それぞれに独立した物語になっているのだけれど「主人公=作者」を思わせる形で描かれている。実際、あからさまに作者が登場する作品もあり、父親の死を描いた『塩をまきに』の中には小池昌代が父親をモデルにして書いた小説『幼年』が登場している。

1つ1つの話を楽しむのも良いけれど「作家、小池昌代」を知る資料としても興味深い。

個人的に面白かったのは、テニススクールに通う少年のことを描いた『敗ける身体』。

ザックリと解説すると「試合に出られないのスポーツクラブって何の意味があるの?」みたいなところがテーマになっている。

私は『敗ける身体』を読んで「小池昌代も体育会系の人達の気持ちが分からない人なんだな」と確信したし、温かい気持ちになってしまった。

本道を歩かずにわざわざ裏道を歩く女を描いた『三つの穴』も気に入った。

私。わざわざ裏道を歩く人とは仲良くなれる気がする。私も裏道を歩くのが好きなのだけど、そう言えば夫も裏道を歩くのが好きな人だ。こう言った感覚的な部分って、人生で役に立たなさそうに思えるのだけど「この感覚が合うかどうか」って、結構大事なことだと思う。

収録されていた作品はどれもこれも面白かった。

小池昌代の短編集を読むたびに「次は長編が読みたいなぁ」と思うのだけど、短編集でも質の良い作品をコンスタントに出してくれるのなら「次も短編集でいいかな」と思ってしまった。

小池昌代ほど綺麗な短編小説を書く女性作家は貴重だと思う。小池昌代はもっと広く評価されて欲しい。

次の作品も期待したい。

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