ここ数年間の間で読んだエッセイ集の中でダントツに面白い1冊だった。
面白いと言っても「笑える」と言う意味ではない。
正しは「読み応えがあった」と書くべきなのかも知れない。小池昌代の書く文章は心にストンと落ちてくる感じがして大好きだ。
幼年 水の町
たった一人、世界を見つめていた子どものころ。
わたしは、孤独だったが少しもさびしくはなかった――追憶のエッセイと掌編幻想小説。
水の町・深川に育った著者はじめての幼年をめぐるエッセイ集。
アマゾンより引用
感想
小池昌代が自分の幼年期を思い出して書いたエッセイ集。小池昌代は東京の深川で育ち、父親は製材所をしていたらしい。
小池昌代は私よりも一回り年上なので、ちょと世代が違う感じはあるものの、この本の中には私の知っている昭和の風景が広がっていた。
昭和の風景と言っても「古き良き昭和」って訳じゃないのが面白いと思った。「どうして、こんな不愉快なところに視点を持ってくるの?」と思うような話の方が多いのだ。音読の出来ないクラスメイトだったり、ロリコンの美術教師だったり、高校生の時に乳がんになった妹の話だったり。
小池昌代の視点はあまりにも残酷だ。私は小池昌代の小説しか読んでおらず、どんな詩を書く人なのかは知らないけれど「詩人ってのは、こうも嫌なところをえぐってくるんだな」と感心させられた。
嫌な話ばかりなのに、どうしてこんなに面白いのだろう?
小池昌代の嫌な目線。実は私も覚えがある。人間の心ってけっこうドス黒かったりするもので「あ。この感じ、ちょっと分かる」と思ってしまった。私は大阪で育っている。小池昌代とは育った場所も年代も違っているはずなのに、作品を読んでいると不思議と既視感が込み上げてくるのだ。
万人にオススメしたいような作品ではないけれど「不愉快ネタでもドンと来い!」と言う方で読み応えのあるエッセイを求めているのならオススメしたい1冊。
図書館で借りたけれど手元に置いてじっくり読みたい。