保育園で働く新人の男性保育士さんを中心として、保育園の内外で起こった出来事を連作で綴ったお仕事小説だった。
登場人物の中心に男性の保育士さんを持ってきたことについては「面白い」と思ったけれど、それ以外はこれと言って取柄の無い作品だった。
みんな一緒にバギーに乗って
田村竜太はこの春大学を卒業したばかりの保育士。区立桜川保育園の一歳児クラス・めだか組が彼の職場だ。
先輩に気後れしがちな彼は、子どもたちから信頼を得られず、父母たちにも不安を抱かせていた。無力感を感じながらも、ひとりの子どもとの交流をきっかけにして竜太は成長していく。
キラキラと輝く子どもたちの姿と、子育て現場での様々な問題点を描く連作集。
アマゾンより引用
感想
主人公の視点を1つにして、じっくりと描かれていれば、思い入れるところもあったのだろうけとれど、小さなお話ごとに語り部が変わってしまったことで散漫な印象になってしまったように思う。
「お仕事小説」として読むには悪くないと思うけれど、どのエピソードも取材の枠から出ておらず、いっそ創作ではなく、ルポ本にした方が良かったのではないかと思ったりして。
そして「お仕事小説」として捉えるにしても、保育士さんの熱さが伝わってこなかったのも良くなかった。
保育や育児に関して色々な問題定義がされているにも係わらず、読んでいて熱く憤ったり共感したりする部分が無かったのだ。
子供ネタとなると、ついつい拳を握り締めて熱くなりがちなが「だよね~。確かに、最近はそういう親御さんって多いよね~」程度だったのだ。
何が足りないのかはよく分からないけれど、いま一歩届かない感じ。
私自身、学生時代に保育関係のことを少し齧っていたと言うことと、友人に現役の保育士がいるのとで、どうにも書いていることに対してのぬるさが気になって仕方が無かった。
保育士の仕事って川端裕人が思っているより大変なんだけどな。
川端裕人の作品を読み始めて4冊目。
はじめてのハズレ本だった。次の作品に期待したい。