昨年、芥川賞受賞で話題になったピース又吉のデビュー作。
流石にブームも落ち着いたらしく、図書館でも予約なしで読めるようになったので手に取ってみた。
若手漫才師の先輩と後輩の青春と挫折を描いた作品。
今さらながらに読んでみたいのだけれど、私にはこの作品の良さが全く理解出来なかった。
火花
売れない芸人の徳永は、天才肌の先輩芸人・神谷と出会い、師と仰ぐ。神谷の伝記を書くことを乞われ、共に過ごす時間が増えるが、やがて二人は別の道を歩むことになる。笑いとは何か、人間とは何かを描ききったデビュー小説。
アマゾンより引用
感想
漫才師の先輩・後輩の話…と言うのは聞いていた。
読む前から「きっとものすごく魅力的な人物達なんだろうなぁ」と期待値を上げてしまったのがマズかったのかも知れない。
芸人だからと言って、特に魅力的な人物って訳ではなかった。厨二病こじらせた若者…くらいの印象。
作品中で「面白い」「面白くない」について散々議論が行われるのだけど、そもそも漫才って話芸なので文章だけで面白さを伝えるのは難しいと思う。
実際、漫才を読んでいても全く面白さは感じなかった。
漫才師さんとか、芸人さんが読めば「このネタいいやん」と思えるのかも知れないけれど、素人からすると漫才って漫才師がやってこそ…なのだと思う。
先輩漫才師が彼女と別れるくだりと彼女の後日談、それに主人公コンビの最後のライブの場面はちょっと良かったけれど、全篇を通してメリハリが無く退屈だった。
私は漫才師が主人公の小説が駄目だとは思わない。
例えば連城三紀彦の『白蘭』なんかも漫才師が主人公の作品だけど、短編ながら心にグッと食い込んでくるものがあった。
残念ながらこの作品にはグッっとくるものが無かった。
芥川賞を受賞させた…ってからには審査員の目には何か光るものが見えたのだと思う。残念がら私にはそれを読み取ることが出来なかったのだけど。
すでに次の作品で発売されていて、恋愛小説とのこと。先輩漫才師の彼女とのくだりを読むにつけ「もしかしたら、恋愛小説は面白いのかな?」とは思わなくもない。
壁本(読後、壁に投げつけたくなるような本)とまでは言わないけれど、数年たったら綺麗サッパリ内容を忘れていそうな気がする。良くも悪くも心に響かない作品だった。