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夏物語 川上未映子 文春文庫

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ちょっと前に読んだ『黄色い家』が好みだったので、川上未映子作品を続けて読んでみた。

『夏物語』はアマゾンの評価的には星4つ。ニューヨーク・タイムズの「必読100冊」にも選出されていて、各所から大絶賛を受けている。「これは骨太小説の予感…期待できる」と手に取ったのだけど、なんか…全面的に無理だった。

「もしかして私の価値観は変なのか?」と首を傾げてしまうほど、個人的に無理過ぎる作品だった。

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夏物語

ザックリとこんな内容
  • 夏子は大阪の下町でに生まれ育った。シングルマザーの母と祖母、そして姉と暮らしていた。
  • 祖母と母が死に、姉と暮らしていた夏子だったが小説家を目指し上京しアルバイトをしながら暮らしていた。
  • ようやく文筆業で食べていけるようになった夏子は38歳の時に「自分の子どもに会いたい」と思うようになる。
  • 夏子はパートナーなしの出産を目指して動きだす…

感想

『夏物語』は「ドラマ」としては面白いと思うのだけど、私と作者は本質的に考え方が違うのだと思う。お話の面白さが吹っ飛んでしまうほどに主人公の考え方が無理だった。それは「宗教上の理由で分かりあえない」くらいに絶望的なものだった。

大阪の下町(名前は変えているが恐らく鶴橋)で育った主人公の人生前半部分まではけっこう面白かった。ありがちな浪花節的物語…と言ってしまえばそれまでだけど、主人公も周囲の人達も生き生きと描かれてて面白かった。

だけど物語の本質である「独身女性が精子提供を受けて出産する」ってことと、それにまつわる考え方や議論云々の流れはどうにも納得出来なかったし「無理…無理・無理・無理」みたいな気持ちになってしまった。

……とは言うものの。実のところ私も『夏物語』に描かれている世界観とか、女性の権利云々とか出産感は理解できるし、それは世界のスタンダードな価値観になりつつある。だけど、主人公や議論している人達は全員大人で子ども当事者ではないのだ。

私は児童福祉の世界で生きている人間なので「子の福祉」を最優先に考えてしまう習性がある。『夏物語』で描かれた世界と理屈は全て大人視点での考え方であり「子」個人の権利や意思は尊重されていないのだ。

主人公の言い分や主人公を応援する人達に対して「フザケンナ!」と怒鳴りつけたい衝動にかられてしまって、やりきれなかった。子どもは女性のアクセサリーでも自己肯定感や満足感を得るためのアイテムではないんだけどなぁ。

正直、主人公や主人公を肯定する人達の意見よりも善百合子の意見の方が私にはしっくりきた(全面的に納得できた訳じゃないけど)

川上未映子はもう読まないと思う。物語を作る力量は素晴らしいと思うものの人間としての根本的な考え方が私には合わない。これは彼女の文学を否定するものではなくて、ロックバンドが「音楽の方向性の違いにより解散します」みたいな感じ。この作品で打ち止め(読み止め)とする。

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