『パッとしない子』はアマゾンオーディブルで聞いたのだけど、『パッとしない子』は紙媒体のだと『噛みあわない会話と、ある過去について』と言う短編集に収録されているとこのと。ちなみに『パッとしない子』だけ収録された紙媒体の本は販売されていない。
昨今は紙媒体の本ではなく、電子書籍のみの発売をする作品がチラホラ出ている。先に読んだ『観音様の環』もKindleとオーディブルのみだったけれど、今後はこの流れが加速していくるのかも知れない。
今回はネタバレ込みの感想になるのでネタバレNGの方はご遠慮ください。
パッとしない子(噛みあわない会話と、ある過去について)
- 小学校の図工の教師、松尾美穂は人気絶頂の男性アイドルグループのメンバーになった高輪佑の弟の担任をしていた事がある。
- ある日、テレビ番組収録のため高輪佑が小学校を訪れた。
- 美穂の記憶にある佑は地味で、パッとしない子供だったし、プロはだしと称賛される絵の才能も、片鱗は見いだせなかった。
- 撮影を終えて完璧な笑顔で美穂の前に現れた佑は美穂に話したいことがあると切り出すのだが…。
感想
巷の評判が良かったので読んでみた(オーディブルなので聞いたみた)のだけど、猛烈に嫌な感じの作品だった。
いきなりネタバレして恐縮だけど『パッとしない子』は主人公の小学校教師がアイドルとして活躍している青年から、かつて担任をしていたアイドルの弟の恨みの復讐をされる…って話だった。
主人公の美穂は小学校の図工教師。現在は結婚して家族もいる40代女性。有能な教師だとは言えないまでも「そこまでのクズだっか?」って事については疑問が残る。
現在、アイドルとして活躍中の高輪佑は自分の弟が指導によってメンタルを病んでしまったと恨みを持っていて、彼女が傷つくような復讐に出るのだけど、ちっとも応援出来なかった。
クズな教師がいるのは分かるし、それによって心に傷を負う子がいるのも分かる。
だけど、それって何から何まで教師が悪い…とも言い切れない部分がある。『パッとしない子』の場合は虐待とかイジメの隠蔽…みたいな悪質な話じゃない。確かに主人公の松尾美穂は無神経で至らない教師だったと思う。だけど教師だって人間なのだから完璧ではないのだ。
そして物語のギミック的に「これって、どうなの?」と腑に落ちなかったのは「運動会の入場門」のエピソード。美穂の主張と佑の主張が噛み合っていないのだ。最後の最後まで「美穂=悪の教師」みたいな流れできているのだけど「もしかして…佑は美穂を陥れるために嘘を言っているのでは?」って疑問が生じるのだけど、それにしても物語の整合性的に微妙な気がした。
『パッとしない子は』は読んでいてドキドキしたし、考えさせられるところも多かったものの、美穂にも佑にも気持ちを寄せることができなかったし、話の整合性もイマイチで、読後感は最悪だった。
ただ、読んだ後にこれほどモヤモヤした気持ちにさせてくれる作品って、それはそれで凄いと思うし、機会があれば辻村深月の別の作品を読んでみたいと思った。