『ブラック・クランズマン』は2018年のアメリカの伝記犯罪映画。実話を元にした作品とのこと。黒人警察官とユダヤ人警察官がKKKに潜入捜査す物語。
KKKとはアメリカ南北戦争以後に発足した白人至上主義を唱え黒人やユダヤ系を差別し敵視する秘密結社でメンバーはクランズマンと呼ばれているらしい。KKKの全国組織は1920年代に崩壊したとされているが、現在も細々ながら活動が続いている。
KKKって日本人にはいまいち馴染みが薄いけど、ホラー映画などに登場する「三角白頭巾をかぶって白装束でキャンプファイヤー的なことをするヤバい集団」のモデルになった団体と言えば雰囲気が掴めるかと思う。
私はKKKについて、よく知らなかったので『ブラック・クランズマン』は純粋に映画としても面白かったし、知識的な意味でも面白かった。
ブラック・クランズマン
ブラック・クランズマン | |
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BlacKkKlansman | |
監督 | スパイク・リー |
脚本 | スパイク・リー デヴィッド・ラビノウィッツ ケヴィン・ウィルモット チャーリー・ワクテル |
原作 | ロン・ストールワース 『ブラック・クランズマン』 |
出演者 | ジョン・デヴィッド・ワシントン アダム・ドライバー ローラ・ハリアー トファー・グレイス |
音楽 | テレンス・ブランチャード |
公開 | 2018年8月10日 2019年3月22日 |
ざっくりとこんな内容
物語の舞台は1972年のアメリカ、コロラドスプリング。
黒人のロン・ストールワース警察で採用面接をを突破し、警察官として働くことになるが、白人警官から嫌がらせを受ける。
上司はロンを過激とされている黒人活動家カーマイケルのイベントに潜入させることを計画すし、他の白人警官フリップ・ジマーマンとイベント会場に向かわせた。
イベント会場に到着したロンは黒人学生グループのリーダーのパトリス・ダマと出会い、恋に堕ちるが、ロンは自分が警官であることを言えないまま、パトリスとの交流を続けていく。
ロンは新聞を読んでいるとKKK系団体の広告を見つけ、団体の調査のため白人のふりをして電話をし、黒人の批判する。ウォルターという団体幹部はロンとを気に入り、会合に招待する。
しかし、ロン自身がKKKに会うと黒人であることがバレてしまうため、ユダヤ系で黒人に好意的なフリップがロンになりすまして会合に出席。フリップはKKKで黒人の悪口を言い、首尾よく団体の会員になる。
KKKに潜入捜査をする中で、ロンとフィリップはKKKが爆弾テロを計画していることを突き止め……
黒人と白人のドタバタコンビ
『ブラック・クランズマン』のテーマは「KKKと人種差別」ではあるけれど、社会派色は薄めなので「異色の刑事物」として観てもらっても大丈夫だと思う。
そもそもアメリカ映画において「黒人と白人のコンビ」は定番ネタ。たいていの場合、黒人の方がクレバーに描かれていて、白人はちょっぴりだらしないキャラだったりするのだけど『ブラック・クランズマン』の場合はどちらも対等な感じに描かれていて交換が持てた。
黒人警察官のロンは仲間内全員から受け入れられていた訳でなはない。相棒のフィリップにしても最初からロンと上手くいっていた…って訳ではないけれど、少しずつ距離を縮めていく感じがとても良かった。
白人であるフィリップ自身、ユダヤ人と言うことでアメリカ人社会から迫害される対象だったため、ロンと距離を縮めるのも早かったのかな…って感じではあるけれど互いが「相棒」として信頼できるようになっていく過程は素敵だった。
みんなバディ物って好きよね。まあ、私も好きなんですけど。
人種差別ヤベェェェ
『ブラック・クランズマン』を観て最も驚いたのは「アメリカ人の人種差別主義者って、どうしてあんなに差別活動に頑張れてしまうの?」ってこと。
『ブラック・クランズマン』ってザックリと50年前の設定なんですよね。50年前にそこまで過激な差別運動があった…って事自体が衝撃だった。
日本人の私からすると「KKKの人達って何なのは? 他にやる事ないの? 暇なの?」と、不思議で仕方がない。
何なんだろうなぁ…新興宗教にも似たあの感じ。
それにしても新しいことが好きなイメージの強いアメリカ人がオカルトめいた昔風の装束に身を包んて大真面目に儀式をしている様子は「歴史の浅い国」のコンプレックスのようなものを感じた。
そう言えば。アメリカが発祥だと言う「エホバの証人」も妙に儀式にこだわっていて、洗礼は他のキリスト教とは違って頭から水をかける方式じゃなくて、イエスが行ったのと同じ形で全身水に浸かるそううだけど、意外とアメリカ人は儀式を尊ぶ人達なのかも知れないな…なんて事を思ったりした。
話が脱線してしまったけれど、KKKは現在では壊滅状態にあるようだけど、アメリカで人種差別が無くなった訳ではないし、黒人ヘイトもそうだしアジア人が暴力を受けたりもしている。
「人種差別活動に向ける情熱と労力を世のため人のため使ったらアメリカはもっと良い国になるんじゃないかな?」と思ってしまうのは私がアメリカ人ではないからなのだろう。
作品のバランスは微妙
『ブラック・クランズマン』はアメリカでは評価が高く、カンヌ国際映画祭ではパルム・ドールを逃したものの、審査員特別グランプリを受賞している。
確かに良い映画だなぁ…とは思うものの「映画」としては微妙かな…って気がした。ちょっと作品のバランスが悪いのだ。
『ブラック・クランズマン』は社会派でもアクションでもドラマでもない。そこが魅力と言えば魅力なのだけど、ガツンと響くところがない。
「主義主張を抑えつつ楽しめる作品にしたかったのかな?」と思うものの、絶妙にハズしてしまった感がある。
個人的には「ちょっと残念な作品だな」と思ったけれど「KKKや人種差別問題についての知識を得た」と言う意味では観て良かった。