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映画『好きにならずにいられない』感想。

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『好きにならずにいられない』は2015年のアイスランドの映画。

主人公のフーシはデブでハゲでヲタクでコミュ障で童貞…と言う設定。もう設定だけで強過ぎる。一部界隈では絶賛された作品だけど、正直観ていて辛い部分が多く、見る人を選ぶ作品だとし思う。

今回は盛大なネタバレ込の感想なのでネタバレNGの方はご遠慮ください。

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好きにならずにいられない

好きにならずにいられない
Fúsi
監督 ダーグル・カウリ(英語版)
脚本 ダーグル・カウリ
製作 バルタザール・コルマウクル
アグネス・ヨハンセン
出演者 グンナル・ヨンソン
リムル・クリスチャンスドッティル(英語版)
音楽 スロウブロウ(英語版)
公開 アイスランドの旗 2015年3月20日
日本の旗 2016年6月18日

ざっくりとこんな内容

アイルランドで暮らす主人公のフーシは43歳。デブでハゲでオタクでコミュ障で童貞と言う設定。

非モテの王道を突き進んでいたフーシは独身で母・フィヨラと2人で暮らしてた。仕事は、空港で飛行機に荷物を運んでいます。趣味は戦車など玩具集めること。

職場では童貞いじりをされたりするフーシだが、心優しい男で子どもには優しく、近所の子ども達と遊んだりすることもあったる

ある日、フーシは進められてダンス教室に通うことになる。フーシはダンス教室で知り合ったシェヴンと言う女性に恋をするが、その恋はなかなか上手く進まない。

そんな中、フーシはネグレクト気味の少女にねだられて少女と2人でドライブへ行くのだが、帰宅すると警察がいて誘拐容疑をかけられていたことを知る。事情聴取の末、フーシの疑いは晴れたが、気持ちは晴れないままだった。

フーシはシェヴンに会うためにダンススクールへと足を運がシェヴンの姿が見当たらくなっていた。

シェヴィンの家へ行くと彼女は納屋に引き籠っていて、もう何日も食事を摂っていないようだった。フーシは溜まっていた有給を使い、彼女に寄り添うための長期休暇を取得した。

納屋から出てこないシェヴンの身の回りの世話を始めたフーシは、彼女の職場に掛け合って代わりに出勤することにした。シェヴィンの代わりに日中はゴミ処理場で働き、仕事が終わるとシェヴンの家の掃除や食事作りをする日々。

ある日フーシが仕事帰りに大きな花束を買って帰ると、シェヴンがようやく納屋から出てきてくれた。そして、自分がうつ病であることを打ち明けてくれた。その日からシェヴンは少しずつ人間らしい暮らしを取り戻しはじめ、フーシと半同棲のような生活を送るようになった。

フーシに支えられながら生活するシェヴンは、フーシに同居を提案する。フーシは親元を離れ彼女と共に生きることを決め、ついにジオラマを解体し引っ越しを決意した。

フーシはシェヴィンの家に引っ越しを進めていくが、全ての荷物を運び終わったと思ったタイミングで、シェヴンはまた不安定な精神状態になっていた。

そこでシェヴィンから唐突に「やっぱり一緒には住めない」と同棲を拒否されてしまったフーシは……

あんなん泣いてしまうやん?

『好きにならずにいられない』は主人公、フーシの設定だけで持っていった映画だと思う。デブでハゲでヲタクでコミュ障で童貞の43歳とか!

最近はフェミニズムの勢いが強いけれど、実のところ世の中は「独身男性は叩いても良い」みたいな風潮がある気がする。特にヲタクとか童貞に対する風当たりは厳しい。「誰にも迷惑かけずに生きているのに、なんで叩かれるんだよ?」って話だけど、世の中のカースト的に言うと独身男性の位置は低過ぎると言っても良い。(ただしイケメンを除く)

フーシは確かにデブでハゲでヲタクでコミュ障だけど心優しい男だ。

だけどデブでハゲでヲタクでコミュ障であるがゆえに何をやっても上手くいかなくて、観ていてとても辛かった。

実際にフーシがいたとして…

……とは言うものの。「デブでハゲでヲタクでコミュ障の人を悪く言うのはイケナイと思います!」みたいな、学級委員長的な気持ちになれなかったのも事実だ。

フーシにも悪いところがある。コミュ障なのは良いとしても、世の中のルールとか法律を知らないところはアウトだと思う。

特に近所に住む女の子と2人きりで部屋に入ったり、ドライブに行くのは完全にアウト。

映画を観ている最中に「この映画…いつの時代設定?アイスランドでは児童ポルノとか性的虐待とかそういう意識が薄いのか?」と不思議に思っていたら、案の定、通報される始末。

……分かるよフーシ。分かる。行き場のない少女を放ってはおけない優しい気持ち。だけど、それはやっちゃいけない事なのだ。そいうところが分からないはの「コミュ障云々ではなくて頭が悪過ぎるだろ?」って話。

「フーシの母親もフーシに教えてやれよ?」みたいな気持ちになってしまった。

メンヘラ女に近づくな

さて。そんな駄目っ子のフーシ43歳も恋をする訳だけど、その相手が酷い。

フーシが恋したシェヴィンはなかなかの美人さんなのだけど、メンヘラ女だったのが不幸だった。

フーシはさんざんシェヴィンに尽くし、シェヴィンもフーシを受け入れてシェヴィンの他から同棲しようと持ちかけてきたのに土壇場になってから「ごめん…やっぱ無理」とか、どういう了見だよ?

「だってシェヴィンは鬱だから仕方ないんだよ。シェヴィンだって辛いんだよ」と言ってしまえばそれまでだけど、私は「鬱病だからって何でもして良い訳じゃないし、人の心を弄んで良い訳じゃないんだぞ」と本気で腹が立ってしまった。

ヲタクの捧げる真実の愛……

『好きにならずにいられない』を絶賛する人達は、たぶん…だけど、そんなに酷い目にあいながらもフーシが最後まで恋人に愛を捧げ尽くしたところにグッときたのだと思う。

フーシはシェヴンから同棲を拒否されて後もシェヴンが店を開きたいと言っていたテナントを買い取り改装し店の鍵を彼女の家のポストに入れる。

もうね……これはエロスの愛ではなく、アガペの愛だと思う。

『好きにならずにいられない』は刺さる人には刺さる作品だと思うけれど、私は正直言って好きじゃない。

確かにフーシは優しい人だし、フーシの愛の形は素晴らしかったけれど、あまりにも報われなさ過ぎだった。フーシはもっと自由に我がままに生きれば良いと思うし、彼なりの幸せを見つけて欲しい…と心から思った。

……どうにも居たたたまれないような最後まで観ていて辛くなった作品だった。

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