「引っ越し」をテーマにしたエッセイ集。
四方田犬彦は映画評論家。生まれてから17回引っ越したとのことで、引っ越した土地の想い出と共に自分の人生を回想する形式。
ガツンとくるタイプの読み物とは言えないまでも、十二分に面白い作品だと思う。
四方田犬彦の引っ越し人生
地上には2種類の人間が存在している。土地の精霊に忠実に生きようとする者と、死ぬまで懲りずに引っ越しをくりかえす者である。引っ越し回数17回、著者ならではの引っ越し論。
アマゾンより引用
感想
文章を書く仕事をしている人ではあるけれど、作家ではないので文章に華やかさは見られない。それなりに面白いけれど「だからどうした?」的な部分も目立つ。
が、その土地土地の特徴を丁寧に綴っていて、好感が持てた。
「丁寧に綴る」と言っても、観光ガイドではなくて、作者がその年齢の時に見ていた風景を写し取っていているあたりが良い。
年齢が上がるごとに、引っ越し先の目線も変わってくるのだけど、自分も作者と一緒に彼の人生を覗き見しているような錯覚に陥ってしまった。
私は人生で4回引っ越しを経験している。
しかし残念なことに近距離での引っ越しばかりなので引っ越しをしたことにより生活環境の変化を味わったことが無く、生活環境がガラリと変わる引っ越しにずっと憧れている。
幼い頃からずっとずっと同じ土地で暮らしているのだけど、じつは「放浪したい派」なので、放浪日記だの引っ越し記録などを読むのが大好きなのだ。
そんな訳なのでこのエッセイ集を「面白かった」と思ったのだけど、引っ越しに興味の無い人が読んでも面白くないかも知れない。
最近引っ越しを経験した人、引っ越し経験の多い人、あるいは私と同じく引っ越しに憧れを持っている人に読んでいただきたい。
それなりに楽しめる1冊だと思う。