巷で「面白い」と言っている人が多かったので、図書館で借りるのを楽しみにしていたのだけど……それほど面白いとは思わなかった。
荻原浩流の『世にも奇妙な物語』といった感じの短編集。ちょっと不思議な話とかか、軽めのホラーなどが収録されていた。
押入れのちよ
失業中サラリーマンの恵太が引っ越した先は、家賃3万3千円の超お得な格安アパート。
しかし一日目の夜玄関脇の押入れから「出て」きたのは、自称明治39年生れの14歳、推定身長130cm後半の、かわいらしい女の子だった(表題作「押入れのちよ」)。
ままならない世の中で、必死に生きざるをえない人間(と幽霊)の可笑しみや哀しみを見事に描いた、全9夜からなる傑作短編集。
アマゾンより引用
感想
荻原浩はたぶん……ホラーを書くには向いていないのだと思う。恐くもなければ、哀しくもないのだもの。
リアルタイムで起こっている現代の話を描いていた方が良いんじゃないかなぁ。幻想世界に必要な、そこはかとない不思議空気を全く感じることが出来なかった。
ホラー小説にはホラー小説の流儀のようなものがあって「人を恐怖に陥れる」と言う技術は普通の小説と少し違う気がする。
しかしながら目のつけどころは、相変わらず「上手いなぁ」とは思った。
特に『押入れのちよ』あたり。第二次世界大戦時の疵を引っ張りつつ、上手いこと話を引っ張っていたのに感動するに至らなかったのが残念である。中途半端なオチに持っていってしまったのが残念でならない。
どの話にも共通して思ったのは「熱さが足りない」ということ。
荻原浩の根っこは「目にみえない世界」とか、そういうところではなく、現在進行系で進んでいく世界にあると思う。
どれもこれもが上滑りな印象。お話作りが達者な分だけ、救われているなぁ…とは思ったけれど。
言い方は悪いが、毒にも薬にもならない1冊だと思った。