『おしいれのぼうけん』は私にとって、幼稚園で遭遇した「お気に入り絵本」ベスト10に入る1冊。幼稚園で読んでもらって、あまりにも気に入ったので親にねだって絵本を買ってもらった。
ちなみに、当時買ってもらった絵本はいまでも我が家の本棚にある。
『おしいれのぼうけん』は大人になって読み返してみても、ワクワク感は変わらない。身近な場所を題材にした物語で、こんなにトリップ出来る作品は滅多にないと思う。
おしいれのぼうけん
- 舞台は、とある保育園。主人公は2人の保育園児。
- 保育園では悪い事をした時の「お仕置き」に園児を「おしいれ」に閉じ込める方法を採用している。
- 主人公の子供達は「おしいれ」に閉じ込められるお仕置きの最中で押入れから通じる「異世界」へ迷い込みむ。
- そして「ぼうけん」がはじまる……
感想
幼稚園に通うくらいの子ども達は夢見ることが大好きだれけど、それくらいの年頃の子ども達も本気で「剣」だの「魔法」だのという世界があるとは思っていない。
「あったらいいな」と思うことこそあれ「ありえない」ということも、ちゃぁんと知っていたりするのだ。世知辛いような気もするが、そうでなければ子どもは現実世界で生きてゆけない。
だけど、『おしいれのぼうけん』は世界設定が絶妙で「もしかしたら、本当にあるのかも」と思わせるところがある。
なんといっても「おしいれ」なのだ。どこの家にもある「おしいれ」である。
私の周りには子どもの頃に、この作品を読んで、おしいれ好きになった人間が多い。おしいれ」という狭い暗闇の中に子供達は異世界を見るのだと思う。
ちなみに、物語の筋書きは単純明快。
子供達の勇気と、知恵が試されて、2人に友情が芽生え冒険の後、二人はちょっぴり大人になる……という成長物語なのだ。
子ども達はロールプレイング・ゲームに登場するような選ばれし勇者ではなく、最初から、最後まで「ただの保育園児」だった。
ドラクエで言うならば「村の子供AとB」というレベルで、剣も魔法も使えない。それでも彼らは冒険者であり、自分の身体1つで困難を乗り越えてゆくのだ。
子どもの頃は「ただの保育園児」の活躍に自分を重ねて読んだものだが大人になってからは「ただの保育園児」の活躍に胸を熱くした。
どんな大きな困難があったとしても、精一杯頑張って、励まし合える仲間がいれば、きっと乗り越えてゆけるよね……みたいな。
そうとうベタなテーマではあるが、真面目にベタベタな物を読むのも悪くない。
ちなみに絵本の表紙は主人公の2人が手を握りあっているところが描かれている。
繋がれた手に不思議な力を感じてしまうのは大人の屁理屈なのだろう。理詰めでもって、説明しなくても、夢中になって読める冒険物語なのだ。
「ただの保育児」だって、立派な人間だぜ……と思わせられる1冊である。