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映画『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』感想。

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『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』はTVアニメとして放送されていた『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の劇場版アニメ。

我が家は夫婦でTVアニメとして放送していた『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を観ていたけれど、実のところテレビで放送されている時はそこまでハマってはいなかった。

京都アニメーションの作品なので映像美という意味では文句のつけどころのない作品なのだけど、いかんせん物語の筋が甘くてハマり切れなかったのだ。

それなのに、わざわざ劇場に足を運ぼうと思ったのは京都アニメーションを応援したいと言う気持ちがあった。そして、巷の評判も良さそうだった……ってところもある。

……実際、映画は予想以上に良かった。

今回はあらすじから何からネタパレした上での感想になります。ネタパレNGの方はご遠慮ください。

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ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-

映画:ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝
-永遠と自動手記人形-
原作 暁佳奈
監督 藤田春香
脚本 吉田玲子(シリーズ構成)
鈴木貴昭・浦畑達彦(脚本)
キャラクターデザイン 高瀬亜貴子
声優 ヴァイオレット・エヴァーガーデン 石川由依
イザベラ・ヨーク 寿 美菜子
テイラー・バーレット 悠木 碧
クラウディア・ホッジンズ 子安武人
ベネディクト・ブルー 内山昂輝
音楽 Evan Call
制作 京都アニメーション

あらすじ

主人公のヴァイオレットは、元孤児で戦場で「武器」と称されて戦う存在として育てられた。そのため、ヴァイオレットは人間らしい心を持たないまま成長してしまう。

しかしヴァイオレットはギルベルト少佐の導きによって、人としての心を掴んでいく。

戦いの最中、ギルベルト少佐は死亡。ヴァイオレットは戦場で両腕を失い、自在に動く義手を付ける事になる。

退院したヴァイオレットは、ホッジンズの下で自動手記人形(手紙の代筆屋)としてC.H郵便社で働きはじめる。

ヴァイオレットはギルベルト少佐の最後に残した言葉「愛してる」の意味を知りたいと願うが、いまだにその意味を掴めずにいる。

……ここまでがTVアニメで放送されていたザックリとした設定。

映画はヴァイオレットが良家の子女のみが通うことを許される女学校へ派遣されるところからはじまる。

ヴァイオレットに託された仕事はイザベラ・ヨーク(エイミー)という貴族の令嬢を無事にデビュタント(社交界デビュー)を迎えさせることだった。

しかしイザベラはヨーク家の妾腹の子。

ヨーク家の当主に見つけ出されるまでは自分の本当の身分を知らず、母を亡くして一人で貧しい暮らしをしいていた。

貧しい暮らしの中、イザベラは戦災孤児テイラーを拾い、姉妹として生活をはじめる。貧しいながらも幸せを噛みしめる姉妹だったが、イザベラ(エイミー)は気管支が弱く、姉妹の生活は厳しいものだった。

ギリギリの生活の中、イザベラの父親がイザベラを探して訪ねてきた。

過去を捨てヨーク家の人間として生きるのなら、テイラーの生活は保障すると言われたイザベラは妹のテイラーと別れ、貴族として生きることになる。

女学校で一人心を閉ざしているイザベラだったが、ヴァイオレットに打ち解け、自分の生い立ちを語る。

ヴァイオレットとイザベラは友達として信頼し合う関係になり、イザベラのデビュタントは見事成功。

仕事を終えたヴァイオレットはイザベラの元を去るのだが……

映像美の極み

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』はTVアニメを観ていた方がより分かりやすいと思うのだけど、TVアニメを観ず単体で観ても楽しめる内容になっている。

物語のベースはイザベラとテイラーと言う血の繋がらない姉妹。

前半はヴァイオレットとイザベラ。後半はヴァイオレットとテイラーの物語になっている。

前半部と後半部を繋ぐのは手紙と愛。姉妹の橋渡し役が主人公であるヴァイオレット…と言う設定。

物語前半のヴァイオレットとイザベラの物語はため息が出るほど美しい。

良家の子女の通う全寮制の女学校とか、浪漫あり過ぎだし! とりあえず『マリア様がみてる』が好きな人は楽しめると思う。

最初の頃、ヴァイオレットに打ち解けてくれなかったイザベラが次第に心を開いていく過程は少女の成長物語としては定番中の定番だけど、じっくりと丁寧に描かれていて好感が持てた。

そして何と言っても京都アニメーション仕込みの映像美である。

ヴァイオレットが汽車に乗って女学校に向かう場面。車窓にヴァイオレットが映り込んでいるところまで描かれているのだから恐れ入る。

植物の美しさ、水や光の描写は流石京都アニメーションと言ったところ。

そしてデビュタントのダンスシーンのロマンティックさったらなかった。

いや…もう、あの美しいダンス場面に憧れない女子はいないだろう…と言う勢い。文句なしの美しさだった。

純白のドレスに身を包んだイザベラと、男装したヴァイオレットのダンスは美しさとロマンティックの極みと言っても良いと思う。

前半のキーワードは友達

物語前半のポイントはヴァイオレットとイザベラの友情だと思う。

イザベラは血の繋がらない妹との思い出をヴァイオレットに語って「私はテイラーに何もあげれなかった」と心の内を吐露するのだけど、ヴァイオレットが返した言葉が最高だった。

うろ覚えなので表現は微妙に違っているかも

「イザベラ様は私に友達を与えてくださいました。テイラー様にもきっと沢山のものをお与えになったのでしょう」

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』より

戦場で生きてきたため、人の心がイマイチ理解できないヴァイオレットが「友達」を理解する場面は『奇蹟の人』でヘレン・ケラーが水を理解する場面に通じる感動があった。

実のところヴァイオレットには過去にも友達めいた存在がいないでもない。

恐らく相手はヴァイオレットのことを友達と認識していたのだと思うのだけど、ヴァイオレットは友達と認定していなかったのだ。

そんなヴァイオレットがはじめてイザベラの事を「友達」と認識し、イザベラと離れた後もなお友情を貫く流れには涙を禁じえない。

友情は共に過ごした時間の長さでは測れないのだ。

姉妹愛に泣く

後半部は妹のテイラーとヴァイオレットの物語は場所が変わって街中で進んでいく。

妹のテイラーが少しずつ成長していく姿を描きつつ、姉妹の絆と愛が明らかになっていく。

家族愛とか姉妹愛とかに弱い人はタオルハンカチを用意することをオススメする。泣かされるから覚悟しておいて欲しい。私はダバダバ泣いて帰ってきた。

完璧ではない良作

凄く良い作品だと思うのだけど、ちょっとモヤッとするところがあったのも事実だ。

ラストでイザベラとテイラーの気持ちは手紙によって繋がれるし、テイラーはエヴァーガーデン家(ヴァイオレットの身元引受人)に引き取られることになってハッピーエンド…って事になっている。

しかしイザベラの未来については、作品の中でほぼ描かれていないのだ。

デビュタントの後、イザベラは貴族に嫁いでいるのだけれど、嫁ぎ先は極秘扱い。しかも嫁ぎ先ではほとんど家から出ない生活をしているような描写がなされている。

イザベラは妹、テイラーのためにエイミーと言う名前と、それまでの人生を捨て貴族として生きる道を選んだ。

彼女の置かれた状態から考えると、それがベストだったと思うのだけど「あなたはそれで幸せなの?」と言うところ丸っとスルーされているのが、どうにもこうにも。

残念ながら「イザベラは政略結婚したけど夫は優しい人だった」みたいな設定ではなかった。

イザベラの状況が映画で表現されていた通りであるのなら、テイラーの幸せはイザベラの不幸の上に成り立っている訳で、それだとハッピーエンドとは言い難い。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』はTVアニメとして観ている時も「話の詰めが甘くてハマれない」という部分があったのだけど、その甘さは映画にもしっかり踏襲されていて残念だった。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』に限った事ではないのだけれど、最近の日本のアニメは脚本の詰めが甘い作品が多い。

映像とか音楽は100点満点なのに「ちょ…どうして、そうなった?」みたいなオチを付けたり、謎過ぎる解釈を持ってきたりする事が多々ある。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』の場合、ラストシーンでイザベラが笑っている姿が大写しにされるのだけど、それだけでは意味が分からない。

政略結婚した夫と離婚して屋敷を飛び出して欲しかった…とまでは言わないけれど、夫と手を握って歩いている(政略結婚だったが仲の良い夫婦だった)的な場面を映しても良いし、あるいは妊娠して幸せを噛みしめている場面があっても良かったのではないかと思う。

作品としては残念な部分もあったのだけど、血の繋がらない姉妹の絆を描いた作品としては良かっと思う。

  • 前半部はイザベラとの友情
  • 後半部はイザベラとテイラーの姉妹愛

……そして、主人公のヴァイオレットの成長も感じられて、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』はヴァイオレットと言う自動初期人形の物語として、未来を感じさせる流れを作っている。

京都アニメーションの放火事件が無かったら2020年1月10日に『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の完全新作が公開されるはずだったのだけど、現在は延期と言う事になっている。

新作の公開はずっと先になるかも知れないけれど、楽しみに待っていようと思う。

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