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遠い旋律、草原の光 倉阪鬼一郎 早川書房

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美貌の女性指揮者と不治の病と戦う画家の青年が彼らの祖父母から続く因縁と謎を解き明かしつつ、それぞれに成長し恋に落ちていくミステリ恋愛小説。

もう「これでもか!」と言うほど色々な要素が詰め込まれていて、雰囲気小説としては最高だと思う。

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遠い旋律、草原の光

軽井沢フィルを率いる美貌の指揮者・火渡樹理と難病を患う新進画家の緑川弦が出会ったとき、三代にわたり二家を縛る不思議な因縁が露になる。

第二次大戦中に起きた樹理の祖父の割腹自殺と弦の祖母の密室での縊死事件。

短歌と楽譜、そしてロシア文字に隠された美しくも哀しい暗号とは?

樹理と弦にのみ聴こえるヴァイオリンの旋律が二人を真実の高みへと導く。現代のサナトリウム文学的恋愛音楽ミステリ。

アマゾンより引用

感想

私はもともとミステリは苦手なのだけど、この作品はサクサク読めた。

ミステリ好きではないので、あれこれ言うのは憚られるけれどもミステリとしては大した事はないんじゃないかと思う。

謎解きもさることながら、その謎自体もそれほど重要とは思えなかったのだ。正直、暗号なんかなくても、ちょっと気の利いた人なら勘だけで分かるレベル。

恋愛小説としてはまったくもって物足りない。綺麗なのだけど、アッサリ風味。

しかし雰囲気小説としては抜群に良いと思う。

美貌の指揮者。不治の病と戦う画家。軽井沢。過去から続く謎と、音楽の調べ。

もう、それだけでご飯何杯でもおかわり出来ちゃいますって感じだ。文章が美しくて、ミニシアター系の映画にしたら綺麗な作品に仕上がるんじゃないかなぁ……と思うような場面が多々あった。

そして私が何より気に入ったのは、音楽を文章で上手く表現していたって事。

特にクラッシックが好きな人なら「うわぁ~」ってなる場面があるように思う。

もちろん、あくまでも作者の持つイメージの世界が性に合わない人もいるとは思うけれど、文章を読んでいるだけで、その曲が思い浮かんでしまうほどに、音楽的な部分の表現が巧みなのだ。

物語を楽しむと言う意味では、軽過ぎて余韻が残らないのだけれど、雰囲気を楽しませてくれたと言う意味だは抜群に良かった。

決して名作とは言い難いのだけど、心に残る1冊だった。

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