歌川たいじの作品を読むのはこれが2冊目。
はじめて読んだ『やせる石鹸』が猛烈に面白かったので、新作が出たら読みたいと思っていたのだ。
ただ『やせる石鹸』に続く2作目は母親とトラウマを描いた作品らしく、イマイチ読む気になれなかったので、2冊目を飛ばして3冊目を読んだ…と言う流れ。
作者の歌川たいじはゲイとのこと。『やせる石鹸』にもゲイの登場人物が登場するし、この作品にもゲイが登場する。
花まみれの淑女たち
30代にして職を失い、無為な日々をすごす由佳が出会ったのは、北新宿“花まみれビル”に暮らすお年寄りたち。
見た目は、ほのぼのとしたシニアグループ、その実態は…七色の声を持つカリスマ歌手や、日本中にネットワークを張り巡らす植物学の元教授、ハイテク機器を駆使して暗躍する探偵チーム(メンバーはおばあさんのみ!)など、型やぶりのマダムたちだった―。
アマゾンより引用
感想
今回読んでいてちょっと気になったはの「ゲイやレズビアンの作家さんって、必要以上に自分と同じセクシャリティの登場人物に肩入れするよね」ってこと。
仕方がないとは思うものの、少なくともこの作品に登場した「レナラ」と言うゲイの老女(正しくは老人)の扱いについては、やり過ぎ感が半端なくて軽くウンザリしてしまった。
ストーリーをザックリ解説すると「老女が大暴れして世直しする話」で佐藤友哉の『デンデラ』に影響を受けたとのこと。
軽い文章でサクサク読めるし、登場人物達はいい人ばかりで読後感は悪くないのだけれど、正直言って物足りなかった。
漫画ちっくと言うか、ラノベちっくと言うか。『やせる石鹸』の時も感じたのだけど、物語の畳み方が雑過ぎて「そんな上手くいくわけないよ」と思ってしまった。
小説の世界では何でもアリとは思うのだけど、読者を引き込む根拠や説得力が無いと話に入り込み難い。
ビッグコミックに連載しているサラリーマン向けの漫画を読むような感覚でしか読めなかった。
ただ「作者の歌川たいじって人は心優しい人なんだろうな」って事をなんとなく思った。
登場人物達はみんないい人で物語に愛が溢れている。作品の方向性は好きなんだけど、なんかちょっと惜しい。
大人が読むには物足りないしツッコミ足りない。だけど映像化したら面白いだろうな…とも思う。映画化かテレビドラマ化されそうな予感。
次の作品に期待したい。