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炎の来歴 小手鞠るい 新潮社

本を読むのに適切な年齢とか季節なんて物は無いと思っている派だけど、高校生の夏に読んで欲しいな…と思ってしまった。

物語は第二次世界大戦後の日本、アメリカ、ベトナムが舞台になっている。テーマは恋愛。そして戦争と平和。とにかく作品に込められた熱量が凄い大作だ。

恋愛…と言っても、遠距離恋愛である。

しかもSNSだのインターネットだのが無い時代の話なので、文通で関係を深めていく。昨今、お目にかかれなくなってしまったプラトニックラブの世界だ。

「文通で人を好きになるなんてことあるの?」と思う人もいるかも知れないけれど、私は20代の頃、数年に渡って文通をしていた事があるので「文通で恋に落ちることはある」と断言出来る。

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炎の来歴

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ザックリとこんな内容
  • 戦後の日本ベトナムが舞台。
  • 14年間に渡る文通によって燃え上がる恋を描く。
  • 恋愛だけでなく、戦争についても深く考えさせられる作品。

感想

「会えないからこそ募る想い」って言うのは、ネット恋愛にも通じるところがあると思う。

私は夫と2ちゃんね(現在の5ちゃんねる)で出会い、メールのやりとりから関係がスタートした。今にして思えば、私は夫の文章に惚れたのかも知れない。

主人公カップルの男性側は田舎から出てきた高卒の若者。

働きながら大学進学を志すのだけどなかなか上手くいかない。そうこうしているうちに、知り合いの大学生に届いた手紙を盗み、自分の身の上を大学生だと偽って、文通をはじめる。文通相手はアメリカ人の平和活動家の女性。

文通と言っても、色っぽい内容ではなく、「平和活動」についての調査だったり報告だったり。主人公の男性は英和辞典を片手に、彼女と手紙を交わしたい一新で必死に手紙に食らいついていく。

この作品は単なる恋愛小説としても凄いのだけど、恋愛小説の枠には納まりきらないところが、また凄い。

途中、ちょっとビックリするような展開が待っているのだけれど、それについてはネタバレを控えたいと思う。

最初に書いたように、この作品のテーマは恋愛だけではない。「戦争と平和」も大きなポイントになってくるのだけど、テーマを2つ突っ込んできた事については賛否が分かれるところだと思う。

私は「やり過ぎかな…」と思ってしまった。

ビックリするような展開があった後の後半から終盤にかけての流れは、別の物語と言うか、付け足し感があって少し残念な感じがした。

恋愛についての感想は…と言うと「会ったこともない人に恋をする」と言う感覚には共感したし、真面目で不器用過ぎる恋人達にはヤキモキしたしで、胸を熱くして読ませてもらった。

ただし、好き嫌いを問われたら「微妙」としか言えないのも事実だ。

恋人達はあまりに身勝手で、本人的には良かったのだろうけど「えっ? それって、周囲の人間からすると大迷惑じゃね?」としか思えない行動を取っている。

物語としては面白いのだけれど、家族や友達だったら遠慮したい感じ。「恋愛ってそんなもんでしょ? 周囲のことなんか考えられなくなって当たり前でしょ?」って意見がある事は承知しているけれど、個人的には「アイツら、人としてアウトだよね」としか思えなかった。

散々っぱら文句を書き散らしておいて言うのもなんだけど、面白いことには間違いないし、心熱くなる大作だと思う。

「勢いのある熱い作品」と言う意味では今年読んだ作品の中ではナンバーワンだ。

好き嫌いはさておき、読んで良かったと思える1冊だった。

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