『カラー・パープル』はスピルバーグが監督した、同名の映画を観て感動したのが読もうと思ったキッカケだった。
私にとって、ショックな作品だった。映画も、原作も。
ここでは原作になっている小説の感想を書くけれど、映画版も猛烈にオススメしたい。
カラー・パープル
16歳の黒人娘セリーは、名も知らないミスター**のもとへ嫁がされ、夫の暴力の下で毎日を耐えていた。
愛する妹も夫に襲われ、彼女は失意のまま、アフリカへ渡った。
……黒人社会の中に巻き起る差別、暴力、神、性といったすべての問題にたち向い、やがては妹との再会を信じ、不屈の精神を糧にするセリー。
女の自由を血と涙で獲得しようとする女性を描く愛と感動のセンセーショナル・ノベル。ピューリッツァ賞、全米図書賞受賞。
アマゾンより引用
感想
『カラー・パープル』はアメリカの黒人女性の半生を描いた作品なのだが、彼女の虐げられ方は半端ではない。
黒人だから……という類の虐げられ方ではなくて女性ゆえに、虐げられていく物語だった。
私にとってアメリカという国は女性の権利が守られている国として認識されていたので少し時代が遡るとは言え、そういう現状があった……ということは信じられないほどに衝撃的だった。
もっとも、この小説はノンフィクションであり、まったくの作り物だが作者は女性問題に精通している人なので作り事を並べ立てたものだとは言い切れないところに注目したい。
主人公の女性は、自分の意志などまったく尊重されないままに成長する。
父親に犯され、最愛の妹と引き離され、父親の一言で好きでもない男のもとに嫁がされ。そして子を産み、育て、生きてゆく……だがしかし、主人公は半ば諦めを感じながらも、正面から人生と取り組んでいくのだ。
その真面目さと、真摯さには、心打たれるものがあった。
少々ネタバレになってしまうが、主人公は最後に幸福を掴む。それは決して棚ボタでも、奇跡でもなくて彼女が自分のおかれた立場の中で、ひたむきに生きた結果に掴む幸福である。
この作品の中に出てくる事件や、出来事や、現実を思うと、ほとほと生きているのにウンザリしてしまう。
嫌な人間はいっぱいいるし嫌なことはいっぱいあるし、頑張ったってままらないし。
しかし、生きるのは大切だし、やっぱり生きなくちゃいけないし、いいこともあるし……というようなことも、思い知らされるのだ。
かなり痛いエピソードが満載で、読むのにちょっぴりキツイけれども読後感は悪くない。
色々な要素が含まれているが、結局のところ直球勝負の骨太な作品なのだ。生きていくのに「強さ」は必要だよなぁ……と思わされる1冊である。