『水に埋もれる墓』は私に受け付けない文章だったが、ある意味において上手いと思う。読んでいて気分が悪くなる文章なのだ。モダンホラーとか、そっち向きの文章。
いちいち「おえっ」となるポイントをくすぐってくると言うか。好きな人にはたまらいのではないだろうか。
私は好きじゃないけれど、個性的という意味では評価したい。海外のマニア向けなホラー作家さんの文章に近いノリ。この作品はホラーではなかったけれど。
水に埋もれる墓
ザックリとこんな内容
- 朝日新人文学賞受賞作。
- 山と湾に囲まれた小さな共同体「浦」に住む老婆と少女の3章から成る物語。
- ちょっぴりグロい描写あり。
感想
小野正嗣はこの作品で「朝日新人文学賞」を受賞したとのことだが、「朝日新人文賞」って、他の新人賞より濃ゆい文章を書く人が多いような気がする。
確か中山可穂も「朝日新人文学賞」の出身だったような。
朝日新人文学賞は好き嫌いはともかく意欲的で「THE・文学」って感じの作品が多いように思う。
『水に埋もれる墓』の場合は「気持ちの悪い文章を書くのも一種の才能だよなぁ」と思った。
「自分の感覚に合わない文章=低い点数しかつけられない」って訳ではないあたりが自分でも、ちょっと不思議に思う。
文章が、もうちょっとマイルドだったら、物語的には嫌いではない。
同じネタを別の作家さんが書いていたら好きだったかも知れない。エロスとホラーは絡み合ってこそ華……ってところがあるのは分かるが、絡み合い方がツボではなかった。
恐いと言うよりも、気持ち悪くて。長い比喩が多かったのと、男性作家さんなのに、やたらと女性の感覚を取り入れているのが気にかかった。
「経血」って言葉がよほど気に入っているのだろうか? 何度か登場するのだが、あまり感じはよろしくない。
私は好きになれなかったが、それはそれで面白いのかも知れない……と思える1冊だった。
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