『新 13歳のハローワーク』はかつて一世を風靡した『13歳のハローワーク』の改訂版。
私は『13歳のハローワーク』が出版された時はすでに結構な大人だったので、書店で並んでいるのをパラ見しただけで読まなかった。
今回、この作品を読んだのは夫が娘のために購入したのがキッカケ。「せっかく家にあるなら読んでみようか…」と手に取った。
『新 13歳のハローワーク』村上龍
- 基本的には前作『13歳のハローワーク』と同じ。
- 前作に89の職業が追加。
- 「国語が好き」「社会が好き」「理科が好き」「体育が好き」等、好きな教科から職業を探す事が出来る。
感想
このサイトでも何度なく書いているけれど、私は村上龍の小説が滅法苦手だ。
村上春樹と並んでW村上とか言われていた時代に『トパーズ』あたりから読んだものだから「だめだ…スカトロ系変態にはついていけない…」と挫折した。
こればかりは嗜好の問題なのでどうしようもないのだけれど、私はスカトロだけは生理的に無理みたい。
なので村上龍の世界はどうしても無理だった。実のところそっち系じゃない作品も沢山書いておられるようだけど、最初に受けた印象が強烈過ぎたのだと思う。
私の村上龍感はさておき。
『新13歳のハローワーク』は実に真面目で素晴らしい本だった。
「人間っていろんな顔があるんだなぁ…あんな小説書く人が、こんな作品を書くんだなぁ…」と変な意味で感心してしまった。
作品の内容はザックリとした職業紹介。
読者が得意とする事柄から、出来そうな仕事が探せちゃったりする親切設計。
しかし押さえるところはキッチリ押さえてあって『はじめに』と言う項目では「自分探しなんてムダである」とか「職業は人を選ぶ。身長155センチの人はファッションモデルにはなれない」と切り込んでいたのには感心した。
そして肝心の職業紹介。
大人が読んでも面白いと思う。もちろん深く感銘を受けるとかそう言うのではなく「流し読みするなら」くらいの話。
「世の中にはこんな沢山仕事があるんだなぁ」と改めて確認するのも良いし、自分の仕事を探してみるのも良いと思う。
この本を読んだ大人の感想を見てみると「IT関係、理系の仕事が少な過ぎる」と指摘する人が多いのだけど、実際掲載されている仕事には偏りがあるように思う。
ただ、これについてはどんなに配慮したところで「全ての仕事をまんべんなく」と言うのは不可能だと思うので「無理言ってやるなよ」と言う気持ちになってしまった。
気になる問題点
私自身が気になったのは、この本の中で紹介されている職業の中に「食えない職業」が数多く含まれているというところだ。
例えば「歌人」を職業とする人もいるにはいるだろうけれど「歌人として食べていける人がどれだけいるんだ?」って話。
仕事内容を紹介してはいるものの、収入面について全く触れられていないため「これを職業と呼ぶのはどうなんだろう?」と言う職業が多過ぎる気がした。
ワーキングプアと呼ばれる若者が多い現代において、職業と収入は結びつけておく必要があるのではないかと思うのだ。
『はじめに』の項目で「職業というのは、単にお金を稼ぐ手段ではありません。」とは書かれていたけれど、それを無視して語ってしまうのはいかがなものかと。
ただ、子どもが自分の将来を考えるキッカケとして読むには良い本だとは思う。
10歳の娘は「この本、面白いね」と感心して読んでいる。
ツッコミどころのある本ではあるけれど自分の将来について考える年頃のお子さんにはオススメしたい。そして、ついでに親御さんも一緒に読んでみてもいいんじゃいかな…とは思う。