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ドナウよ、静かに流れよ 大崎善生 文藝春秋

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『ドナウよ、静かに流れよ』はノンフィクションの悪い部分が存分に発揮されているなぁ……という印象の1冊だった。

私にとって、興味深い内容ではなかったのと、話のテンポが悪かったのとで、途中で投げ出してしまおうかと思ったほどである。

「面白くなかった」と言い切ってもいいように思うのだけど「現実にあったことだし仕方がないか」と思ってしまうのはフィクションゆえ……というところだろう。

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ドナウよ、静かに流れよ

ドナウ川で邦人男女が心中…その小さな新聞記事が頭から離れなくなった私は、二人の足跡を追ってウィーンへと向かった。もはやこの世にいない19歳の少女、日実は、異国の地でどんな恋をし、何を思い、そして何ゆえに追いつめられていったのか?悲劇的な愛の軌跡を辿る、哀切さにみちたノンフィクション。

アマゾンより引用

感想

19歳の女子大生と、自称、指揮者の30男がドナウ川で心中した事件を追ったルポタージュ。自称指揮者の男は、精神病だか神経症だかを患っていて、妄想癖と虚言癖アリ。

女子大生は男と女子大生は恋に堕ち、2人して破滅へと突っ走っていくという筋書き。死者を鞭打つのは憚られるので多くは書かないけれども、とても付いていけない世界だった。

本人達にも飽きれたけれど、両親の対応も「ちょっとなぁ」と思ってしまって、どこにも気持ちを寄せることができなかったのだ。

この作品のイマイチさ加減は、事実が基盤になっているから……ということもあろうが、作者の責任も大きいと思う。

地味作りな作者の作風や文体に、話の内容が合っていないのと、事件関係者と作者に、ちょっとした縁があったことによって「身びいき」のような部分が濃くなってしまったのが失敗だったと思われる。

せめてフィクションならフィクションのように、回顧録なら回顧録のように方向をハッキリしていれば、もう少し読ませる作品になったかも知れない。

作者のような地味作りな文章を書く男性作家さんが、19歳の女子大生の内面に入っていくのには無理があるように思った。

内面に食い込めないのなら、第三者の目、あるいは大人の目でみた事実を書けば良いものを、すべてを「愛ゆえに」というところに持っていったのは、あまりにも強引で安直な気がした。

ご遺族への配慮があったのだと思うが、読者にも配慮して欲しい。

アジアンタム・ブルー』を読んだ時に「もしかして作者は女性の描写が苦手なのかも」と思ったけれど、今回の作品も同じことを感じた。

女性像にドリームが入りすぎているような気がする。現実との誤差が大きいのだなぁ……大崎善生の描く女性は。

今回はイマイチだったけけど、大崎善生の書く作品は、割合お気に入りなので、次は地味作りな「男」の物語を読んでみたいと思った。

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