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どんぶらこ いとうせいこう 河出書房新社

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表題作と他2編からなる短編集。表題作のテーマは親の介護問題。

他2編は信州のとある一族を描いた作品で「信州弁三部作」との事だけど、表題作と他2編は「信州弁を使っている」と言う以外、ほとんど共通点の無い作品だった。

「どうしてこの関連のない3作品を1冊の本に入れたの?」と首を傾げてしまった。

作者のファンが買うなら納得出来るだろうけれど、大々的に「認知症小説で~」みたいな感じで売り出すなら、もうちょっとやりようがあったのではないかと。

表題作は興味深く読んだものの、他2編がイマイチ好きになれなかったので「抱き合わせ商法かよ!」と思ってしまった。出版社はもう少し本の売り方を考えて欲しい。

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どんぶらこ

「な ぜ 自 分 だ け が こ ん な 目 に ?」

父が倒れる。母が倒れる。
殺されたのは誰なのか? 殺したのは誰なのか?
介護せざるを得なくなった息子/娘の揺れる日常に、
沈んだ不安は今日も漂流、どんぶらこ。
老いた日本社会の濁りが浮かび上がる。

アマゾンより引用

感想

さて。表題作はなかなか面白かった。嫌な感じにリアルで不愉快な仕上がりになっている。

もちろん「不愉快な仕上がり」と言うのは褒め言葉として受け取って戴きたい。介護小説のくくりに入る作品だけど、美しいところもなければ救いもない。

しかし親の介護問題に直面したことのある人なら「分かるわぁ」とか「介護あるあるだわぁ」と思っていただけるのではなかろうか。

親の視点からと、子の視点からそれぞれ描かれているのだけど、親の視点から読むと老いの切なさがグッっときて泣けるし、子の視点から読むと複雑な気持ちになってしまう。

私自身、親の介護問題に片足を突っ込んでいる状態なので、自分の身に置き換えて考えさせられる事が多かった。

介護問題ってNHKの心温まる系の特集のようにはいかないなぁ…としみじみ思う。ドロドロしていて陰鬱で出来れば避けて通りたい。

この作品はその「ドロドロしていて陰鬱」なところが上手く表現されていると思う。

実に嫌な感じのする作品なので、嫌な感じを味わっても平気だって人でなければオススメ出来ないけれど、介護小説としては素晴らしいと思う。

さて「表題作と他2編」のうちの「他2編」の方だけど、こちらについては特に感想は無い。

主人公の子どもの頃の想い出等が描かれている作品なのだけど、私には合わなかったらしく全く興味が持てなかった。

話の盛り上がりに欠け、しかも陰気な空気の漂う作品なので、文字を追いながら「早く終わらないかなぁ~」とさえ思ってしまった。

表題作は良かったけれど1冊の本として…となると全くオススメ出来ない感じ。

いとうせいこうのファンなら楽しめるだろうとは思うけれど「認知症小説、介護小説が読みたい」と言う方は、図書館で借りて表題作だけ読んで頂きたいな…と思う。

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