予備知識無しで手に取ってみた。私小説的作品…なんだろうか。
作者、山下澄人のことも、作品のことも全く知らずに読んだのだけど、どうやら山下澄人は倉本聰の『富良野塾』の出身者で劇団を運営している人らしい。
倉本聰と言うと昭和の人なら知っている『北の国から』の脚本家。
富良野塾は脚本家や俳優を養成する塾として開設されたらしいのだけど、26年末の活動期間を経て現在は閉塾している。
山下澄人はその富良野塾の2期生とこと。
しんせかい
19歳の山下スミトは演劇塾で学ぶため、船に乗って北を目指す。
辿り着いた先の“谷”では、俳優や脚本家志望の若者たちが自給自足の共同生活を営んでいた。苛酷な肉体労働、“先生”との軋轢、地元の女性と同期の間で揺れ動く感情―。
思い出すことの痛みと向き合い書かれた表題作のほか、入塾試験前夜の不穏な内面を映し出す短篇を収録。
アマゾンより引用
感想
私も昭和人間なので、富良野塾のことは知識として知っていた。
なので読み始めてみて「あれ? これって富良野塾のこと?」とピンと来た。
この作品は山下澄人が富良野塾で過ごした2年間を描いたもので、全て事実ではないだろうけれど私小説的な作品のようだ。
さて。肝心の内容なのだけど、正直言って私にはその面白さが全く理解出来なかった。
駄作だとかそう言う意味ではなくて、単純に相性が悪かったのだと思う。
「農作業をしながらの集団生活」なんて体育会系のノリがついていけなかったと言うか。何しろ私はガチガチのヲタクでゆるゆるした文化系の部活しか知らないので「よくわからん作業して何を得る」とか、プライベートの無い集団生活とか読んでいて不愉快でしかなかった。
失礼ながら、集団生活をする事を良しとする新興宗教の団体と大差ないな…と思ってしまった。
とは言うものの、富良野塾や演劇に興味のある人が読めば面白いだろうし、そうでなくても「あのノリ」が好きな人なら楽しめると思う。
「私には合わなかった」と言うだけで、しっかりした小説だとは思うのだ。
この作品を読んで「そう言えば倉本聰も富良野塾も聞いたことあったけど、富良野塾出身者って何してるんだろう?」と調べたところ、富良野塾を出て脚本家になったり、俳優になった人もいるようだけど「知らない人ばかりだな…」と言う面々だった。
もしかたら知る人ぞ知る脚本家だったり、俳優だったりするのかも知れないけれど。
山下澄人は劇団を主催者して、小説家としてもデビューしているのだから富良野塾出身者としては成功したって位置づけなのだろうか。
作品を読んでいると、好き嫌いはさておき。山下澄人にとって富良野塾で過ごした2年間が特別な時間だったって事は理解出来た。
私には面白さが分からない作品だったけれど、気になる方は手にとって戴きたいと思う。